台湾人は概して親切なのだが、特に台東や高雄などの台湾南部を訪れたときに台湾人の優しさを感じる。
台湾南東部に位置する台東に滞在していたとき、こんなことがあった。
とあるチェーン店のドリンクスタンドでタピオカミルクティーを購入したのだが、商品を受け取る際、若い男性店員が何やら伝えたそうにしている。
スマホを手に取って調べ始めたので、「何だろう?」と思ってしばらく待っていたのだが、ようやく見せてくれたスマホの画面には英語で「飲む前に振ってね」と書かれていた。
明らかにミルクとティーは分かれているし、時間をかけてまで伝える必要がある内容かどうかはともかくとして、観光客になんとか伝えようとするその親切さに気分が良くなったことは言うまでもない。
また、台東駅でもこんなことがあった。
駅のインフォメーションカウンターでとある観光スポットまでの行き方を尋ねたところ、英語が多少できる駅員が対応してくれてどの電車に乗ったら良いか教えてくれ、案内された通りに切符売り場の列に並んだ。
普通はそこで案内終了である。
ところが、切符売り場の列に並んでいると、先ほど案内してくれた若い男性駅員が何やら窓口の端っこでスタンバイしている。
すると、僕の番が来て窓口に行こうとしたところ、すかさずその駅員が僕の隣にやって来て代わりに窓口のスタッフに説明してくれるではないか。
まるで僕が初めてのおつかいでもしている子どもかのように、金額やら何やら手取り足取り教えてくれる。
そして最後の一言は「財布忘れちゃだめよ」だった。
若い女性の一人旅ならまだしも、こんな見知らぬおっさんにここまで親切にしてくれるのは感動さえ覚える。
台東はどこかハワイを連想させる南国チックな雰囲気で、人が親切だったこともあって台湾の中でもお気に入りの都市になっている。
田舎の台東だけでなく、台湾南西部に位置する結構な都会の高雄に滞在していたときにも台湾人の親切さを随所に感じることができた。
初めての台湾旅行が高雄だったのだが、勝手が分からずにところどころ立ち止まったりしていると、言葉が通じるかどうかに関係なくとにかくよく声を掛けてくれるのだ。
道で立ち止まると「また声を掛けられるのではないか」と若干心配になるほどである。
台東も高雄も沖縄の八重山諸島より南に位置しているだけあって、熱帯気候でとにかくクソ暑い。
僕はこれだけ暑いとついイライラしてしまうのだが、この暑さの中で見知らぬ他人に親切にできるのには感心してしまう。
この人たちにとって暑いのは当たり前で、怒ったところでどうしようもないのが分かっているから他人に親切にすることでお互い気分良く過ごそうとしているのだろうか。
だとすればもはや悟りの境地である。
このように台東や高雄などの台湾南部ではともすればお節介とも言える台湾人の親切さを感じる一方、台湾北部に位置する首都の台北などは良くも悪くも日本の都市に似ていて、英語や日本語が通じやすくて暮らしやすいとは思うものの、南部の人たちのように積極的に話しかけてくることは少ないように思う。
日本でも東京や大阪より南国の沖縄の人たちの方が親切に感じるが、台湾の南部を訪れて素朴で親切な人たちと触れ合うたびに、「なんだか沖縄の人を積極的にしたような感じだなぁ」と思ってしまう。
南部の人たちが優しいのは気候や文化の違いだろうか?それとも、民族的な違いもあるのだろうか?
いずれにせよ、台湾人の優しさに触れたい方には台東や高雄など台湾南部の都市はおすすめだ。