台湾の東海岸に位置する街である花蓮(Hualien)は大理石の産地として有名らしく、街中の道路にも大理石が敷き詰められている。
一見すると豪華で良いのだが、雨の日にはとにかく滑るのだ。
台東に滞在中は晴れ続きだったのだが、どうも花蓮に来てからというもの雨の日が多い。
台北もいつも雨が降っている印象だし、台湾は地域によって随分と気候が異なるのだろうか。
事件が起きたのは令和元年の元日(5月1日)のことだった。
雨が降っていたこの日もビーチサンダルを履いて花蓮の街中を歩いていたのだが、とにかく道路はツルッツルでよく滑る。
なぜとりわけ滑るビーチサンダルを履いているのかと疑問に思われる方もいるかもしれないが、台湾は概して暑いし、道路は日本ほど綺麗ではなくデコボコしていて水たまりでスニーカーが濡れるのも嫌だったのでビーチサンダルを履いていたのだ。
幾度となくスリップしてコケそうな危険を回避していたのだが、観光地に向かうために公園を横切ろうとしていたその時だった。
雨でびちょびちょになった芝生の上を歩くのが嫌だったので、芝生の間に敷かれた大理石の道の上を歩いていたところ、ツルッと滑って転んでしまった。
それも、地面に一度着地してから滑ってこらえきれずに転ぶのではなく、右足が地面に接したその刹那、まるで漫画に描かれたバナナの皮で滑った人のように後ろ向きに回転してしまったのだ。
幸い、背中に背負っていた大きなリュックがクッションとなり、またあまりにも一瞬の出来事で手を差し出す暇もなかったのが功を奏したのか、身体は全くの無傷だった。
しかし、服は泥まみれになり、首から掛けていたミラーレス一眼カメラがコケたときに大理石の地面にぶつかって傷が付いてしまった。
「アテネの神殿ならまだしも、なんで人々の生活道路にこんなに滑る大理石使ってるんだよ。馬鹿じゃねーの。畜生・・・」
僕は無傷だった幸運に感謝しつつも、半べそをかきながら泥まみれの服を身にまとってホテルへと戻った。
こうして、何年ぶりかの凄まじいコケっぷりと共に僕の令和は始まった。
雨の日の花蓮市内の道路は滑るから気を付けよう、というお話しでした。