はじめに
「生きててよかった」
青が幾重にも重なる透明度抜群の海、無数のヤドカリがせわしなく行き交う真っ白な砂浜、そしてジャングルに囲まれた秘境感たっぷりのビーチを目にした時、そんな思いがふと頭をよぎった。

イダの浜(いだのはま)
世界各地を旅して回っていると、ちょっとやそっとの景色では感動することはなくなってくる。
綺麗な景色を見ても何とも思わず、生きることにもさほどの意味を見出せずただ流離える日々・・・
しかし、西表島の小さな集落を抜けた先にあるこのイダの浜を見た瞬間、僕は心を奪われてしまった。
宮古島の与那覇前浜にも、伊良部島の渡口の浜にも、そして波照間島のニシ浜にも勝るとも劣らないこの絶景。

日本のビーチの中でトップクラスの美しさだ
トリップアドバイザーが2018年に発表した「日本のベストビーチ Top10」に、「陸の孤島」と呼ばれる西表島の小さな船浮(ふなうき)集落にあるこのビーチがランクインしているのを見て、僕はどうしても訪れてみたくなった。
そんなわけで、今回の西表島での最大の目的がイダの浜を訪れることだったのだが、実際に西表島滞在中に日帰りで訪れてきたので以下にご紹介したい。
イダの浜への行き方(アクセス)
イダの浜は西表島の西側に位置する船浮集落の近くにある。
船浮集落は人口50人程度の小さな集落で、西表島の他の地区から道路は通っておらず、船でしかアクセスできないまさに陸の孤島である。
なお、イダの浜にはツアーに参加して行く方法もある。西表島の「星野リゾート」ではシュノーケリングツアーのアクティビティを提供しているようだ。
イダの浜に自力で行きたい方は、まずは船浮集落への定期船が出ている西表島西部の白浜港まで行く必要がある。
僕はこの日は路線バスを利用して滞在している上原地区から白浜港まで行くことにした。
「おぉさかのよる~よくぼうのうずに~♫」
車内のラジオから流れてくる竹内力のドスの聞いた歌声を聞きながら、路線バスは上原を出発。
数人の乗客を乗せた路線バスは西表島の素朴な道をひた走り、30分程度で西の終着地点である白浜に到着した。

白浜行き路線バスの車窓からの風景
船浮行きのフェリーが発着する白浜港は白浜のバス停のすぐ目の前にある。

白浜港
余談であるが、白浜のバス停には「日本最西端のバス停」と書かれている。

イリオモテヤマネコが描かれた西表島路線バスと白浜のバス停
日本最西端の与那国島にも路線バス(らしきもの)があったのだが、こちらは無料だしおよそバス停とは思えないバス乗り場があっただけだからカウントされないのだろうか。
そんな疑問はさておき、白浜港でしばらく待っていると、フェリー「ニューふなうき」がやって来た。

白浜と船浮を結ぶフェリー「ニューふなうき」
往復運賃は960円(大人)で、乗船時に船員に支払う。
なお、白浜~船浮間のフェリーは1日5便しかないので、(バスを利用する人は)バスの時間と合わせて帰りのフェリーの時間を入念にチェックしておくことをおすすめする。
フェリーの時刻表と運賃はこちらのサイトが詳しいので参照して欲しい。
潮風が心地良いフェリーの後部座席に座っている僕以外の乗客は、同じバスにも乗っていたフランス人家族3人、後で仲良くなったイギリス人のお兄ちゃん1人、そして地元(西表島)の人らしきおじさん1人と、日本の僻地にもかかわらず妙にグローバルなメンバーである。
船浮までの乗船時間は約10分。緑に覆われた西表島の島影を両手に眺め、フェリーは程なくして船浮港に到着した。

素朴な船浮港。多くのボートが係留されている
小さな船浮集落を抜け、山道を数百メートル歩くとイダの浜にたどり着く。

イダの浜へと続く山道
ちなみに、イダの浜には何もないしいちいち戻ってくるのも大変なので、食事や準備などは集落で済ませておくことをおすすめする。
秘境の中の楽園・イダの浜
山道を抜けると、そこにはまさに楽園と呼ぶにふさわしいビーチがあった。

プライベートビーチのような静かなイダの浜
どうも、写真ではその美しさが存分に伝わらないのがもどかしい。

透明度抜群の海が広がる
真っ白な砂浜にはサンゴのかけらが散らばり、そして見たこともないほどたくさんのヤドカリがいて、踏んづけてしまわないかと恐る恐る砂浜を歩く。

ヤドカリがこれでもかというくらいいる
海の反対側には西表島のジャングルが広がっており、まるで映画「ザ・ビーチ」を彷彿とさせる秘境感を醸し出していて、サメにでも襲われやしないかと不安になる。

ビーチの背後に迫る西表島のジャングル
アクセスが困難なこともあってかビーチには人が少ないが、船浮集落を経由せずボートで直接ビーチまで来ていると思われるツアー客もちらほらいた。

遠浅の海はシュノーケリングにも良さそうだ
近くには人口50人程度の集落があるだけで、ビーチにはシャワーやトイレ、売店などの人工的な建造物は見当たらないが、そこが原始的な感じがしてまた良い。

イダの浜の全景
イダの浜からは、遠くに西表島の離島らしき島影といくつかの砂浜が見える。

対岸に見える白い砂浜
西表島には山が多く川もあるからか、残念ながらイダの浜以外でこれまで訪れた西表島のビーチはそれほど綺麗だとは思わなかった。
しかし、道路が通っていないイダの浜周辺の未開の地には、まだまだ知られざる美しいビーチが存在しているのかもしれない。
まるで時が止まったかのような絵画的風景の中、僕は砂浜に腰掛け、ただひたすらに美しい海を眺めていた。

時を忘れていつまでも滞在していたくなるビーチだ
イダの浜には人を惹き付けて止まない魅力がある。
「そろそろ帰ろうかな。でも、もう少しここにいたいな」
いざ帰ろうとしても、名残惜しくなってなかなか腰を上げることができない。
八重山諸島だけでなく日本、いや世界の中でもトップクラスの美しさを誇るイダの浜、死ぬまでに一度は訪れて欲しいおすすめの場所である。

再び山道を通って集落へと戻る