映画「世界一キライなあなたに」の原作(洋書)である『Me Before You』、そしてその続編である『After You』のさらに続編となる。
僕は洋書のペーパーバックの質感が大好きなのだが、今回はヨーロッパ(残念ながら『Me Before You』の舞台となったイギリスやパリ、スイスではない)への旅行中に読むためにKindle版を購入した。Kindleは読みながら辞書を引けるので洋書を読むのには最適だ。
本作を読み終えた感想として、一つの物語としては十分に楽しめたのだけれど、前作の『After You』、そして何よりも前前作の『Me Before You』に比べるとかなり物足りなさを感じたので、今回は批判的なレビューを書こうと思う。
以下、少しネタバレもあるのでご了承願いたい。
詳細は本書に譲るが、本作ではニューヨークのお金持ちの家でヘルパーとして働き始めたルイーザ・クラークの奮闘、そしてイギリスにいる前作からの恋人であるサムとの遠距離恋愛が主なテーマとなっている。
残念ながら、今回で僕はルイーザ・クラークにすっかり興味がなくなってしまった。
ニューヨークでの新しい(早急な)恋愛話があるのだが、ルイーザが次から次へと男を乗り換えるただのワガママな女に思えてきたからだ。
そもそも、ルイーザはブスで貧乏(少なくとも、美人ではなく平凡)な女性の設定ではなかったか。身体が動かず世話をしていたウィルはまだしも、超がつくほどのイケメンでしかも成功している男がなぜこんなにも簡単にルイーザが好きになるのか。
これは著者の願望だろうか。どうも、女に都合の良い男の姿が描かれているように思えてならないのだ。
本作ではニューヨークでウィルのドッペルゲンガー(そっくりさん)であるジョシュに出会うわけであるが、この人は完全に要らなかった。
大ヒットした『Me Before You』の続続編ということで、無理矢理関連づけようとしているのかウィルの面影が所々に出てくるわけであるが、正直ストーリーには必要と言えず、ウィルファン(正確に言うと映画「世界一キライなあなたに」のウィルファン)の僕はなんだか興ざめしてしまった。
ウィルの存在感は薄れていく一方で、もういっそ前作からの恋人であるサムとの恋愛話だけで良かったように思う。
この著者の作品には不幸(平凡)な女性が奮闘して幸せをつかむというストーリーが多いようで、本作でも、相変わらず周りの人たちのせいでトラブルに見舞われるルイーザだが、ほとんど運だけで乗り越えていく。
そもそも、完全に周りに依存しているにもかかわらず、頑張っている可哀想な私なんだから報われて当然という流れがなんだか気に入らない。
と、前前作の『Me Before You』が大好きな僕としては不満を連ねてみたのだが、それでもやっぱりこの著者の作品には引き込まれる力があり、一気に読み込んでしまった。
続編だけに前前作、そして前作と読んでいないと理解できない部分があるのが残念なところではあるが、前述の通り一つの作品として読むとそれなりに面白いので、過度の期待はせずに英語の勉強がてら読んでみるのには良いだろう。
それにしても、結構良い人にもかかわらず、存在感が薄くて結局損な役回りを引き受けてしまうジョシュにはなんだか同情してしまう。