【レビュー】『天国に一番近い会社に勤めていた話』ハルオサン

書評

「警察官クビになってからブログ」で人気のハルオサンの本だ。

高卒で幼い頃からの夢だった警察官になるものの、コミュニケーション障害のハルオサンは半年も経たずに警察を辞めてしまう。

その後、学歴や資格のないハルオサンは厳しい就職活動の末になんとか仕事を手に入れるのだが、入る会社はどこもブラック企業ばかりだ。

表向きは家具屋だが死後の部屋を清掃する会社、同僚は前科者ばかりで忘年会では芸を強要され、平均月収は数万円程度にしかならない完全歩合制の営業の会社、体育会系で社長から「ベコベコ」にされる会社など・・・。

他に行き場のないハルオサンは真面目に仕事に取り組み必死に会社にしがみつくが、ブラック企業ではいくら結果を上げても報われることはなく、おまけにプライベートでは婚約者にも浮気をされる始末だ。

社会の底辺と言われるような仕事をしているだけあって、ハルオサンの周りにもろくな人間はおらずなかなか悲惨な話なのだが、ハルオサンのどこかユーモアのある軽快な文章と落書きのような挿絵のお陰で楽しみながらスラスラと読むことができる。

その後、仕事中に首の骨を曲げて、会社や家族、恋人からも見放されたハルオサンは自分の半生を綴ったブログを書き始める。

警察官を辞めてからろくな仕事に就けず自らを卑下するハルオサンだが、本書を読んだ限りでは決して能力が低いわけではなく、真面目な性格も手伝って営業やテレアポの成績は社内トップ、おまけにブログは始めてからわずか2ヶ月で100万アクセスに達する天才振りを発揮する。

ちなみに月間100万アクセスがどれだけ凄いことかと言うと、仮にGoogle AdSense(グーグルアドセンス)の広告を貼ったとするとそれだけで月数十万円は稼げる計算になる。

結局、ブログが有名になったことでコラム執筆や書籍化の話が来て生計が立てられるようになり、ハルオサンは一度は決めた死を免れることになる。

ハルオサンの半生はなんだか別世界のことのようにも思えるが、今の日本社会では、学歴や資格、職歴やコネがなければ、ハルオサンのようにブラック企業を転々とする羽目になるのが実情だろう。

例え大卒でまともな会社に就職したとしても、一度レールを外れてしまえば同じような事態になる可能性は十分にある。

いや、周りの人から羨望を集めるような会社で働いていたところで、過酷な業務に心を病んでしまい自ら命を絶つ人もいるのだ・・・。

なんだか日本社会の闇を見たような気がして、読了後は沈んだ気持ちにさせられた。

人気ブロガーが出版した本というのは面白くないものも多いのだが、ハルオサンの本はこれまで読んだどの本とも違う独特の味わいがあり、買って良かったと思える本だ。

本書に興味を持った方はまずはブログを読んでみるのも良いだろう。ブログでは本書で触れられていない警察官をクビになった詳細な理由も書かれている。

是非、本書やブログを通じてハルオサンの悲惨な人生を体験してみて欲しい。

ハルオサンは現在沖縄に移住して物書きとして静かな人生を送っている。

僕がハルオサンの域に達するのはまだまだ先のことになりそうだが、同じ沖縄好きブロガーとして、ハルオサンの幸せを願って止まない。

「警察官クビになってからブログ」