【映画「めがね」レビュー】旅行前に与論島が舞台(ロケ地)となった映画を観よう!

「じゃあ、ここに遊びに来た人は一体何をするんですか?」

「うーん、たそがれる?」

引用:映画「めがね」

映画「めがね」のあらすじと感想

都会出身で一人南の島にやって来た主人公のタエコは、滞在先の宿「ハマダ」の主人であるユージに島で観光するところはないか尋ねたところ、観光するところなどないと答えるユージに対して冒頭のやり取りが続けられる。「たそがれる(黄昏れる)」というフレーズはこの映画の中で頻繁に使用されており、本作のメインテーマとなっている。

ここ最近日本の映画はあまり観ないのだが、今月下旬から与論島に旅行に行くことにしたので、与論島が舞台(ロケ地)になった本作「めがね」をAmazonでレンタルして観てみることにした。監督は荻上直子で、代表作品には「かもめ食堂」がある。ちなみに舞台となった与論島は鹿児島県に属する離島だが、沖縄本島からほど近く、文化的にも沖縄に近いようだ。

本作のあらすじを簡単に説明すると、都会出身のタエコは「携帯電話が通じなさそうなところ」に行きたくて小さな南の島にやって来るのだが、最初は周囲のマイペース(島時間?)でお節介、かつ奇妙な人たちから距離を置き、一度は宿から逃げ出してしまう。しかし徐々に周りの人たちとも打ち解け、島ののんびりとした生活に溶け込んでいく。まぁ、小さな美しい島で何もしない(「たそがれる」)がテーマなのもあってか、ストーリーなんてあってないようなものである。

淡々と物語が進むためか、都会から小さな離島に移住した人のドキュメンタリーを見ているような気分にもなる。何と言っても、島の風景(特に海)が美しく撮影されていて、南国の離島好きの僕としては、それだけでも惹き付けられてしまうのだ。

映画の登場人物は奇妙とも言えるほど個性的で、映画のタイトルにあるように、主要な登場人物はみんなめがねを掛けている。その理由はよく分からないのだが、その人たちの素性も結局は謎のままだ。

サクラというおばあちゃんは、毎年春になると島にやって来ては浜辺で島の人たちが集うかき氷屋を開き、みんなが毎朝浜辺で踊る「メルシー体操」という謎の踊りを作ったりと、何故か映画の登場人物からは神格化されている。このおばあちゃん、朝に主人公のタエコが目を覚ますと布団の側に座っていたりと、正直言って気持ちが悪いのだが、沖縄のユタやシャーマンのような雰囲気を出そうとしているのだろうか。

主人公と同じように離島にやって来て高校教師をしている毒舌のハルナは、突然浜辺で「死にたい」というセリフを呟く。忙しい都会の生活に疲れたサラリーマンがこんなセリフを言うといかにもシリアスに聞こえるが、のんびりとした離島の美しい風景の中だと何故かシュールに聞こえて面白い(ほとんどの人は、綺麗なビーチでは正反対の言葉を口にするだろう)。最も、その理由が「可愛い男子がいないから」というのもあるだろうけれど。

とにかく難しいことは考えず、登場人物の不思議なやり取り、そして与論島の美しい風景を楽しむ映画である。僕のように離島好きであれば観ているだけでも楽しめるだろうが、そうでなければ、独特の世界観に好き嫌いが分かれるかもしれない。

主人公が離島で見つけたものと僕が離島に求めているものは同じような気がして、ついつい映画の世界に入り込んでしまった。そして、それが登場人物のせいなのか、それとも離島の美しい風景のせいなのか、はたまたその両方のせいなのかは分からないけれども、見終わった後にはほっこりとさせられた。

この映画を観たことによって与論島で映画のロケ地を訪れるという楽しみも増えた。離島に行ってもついつい都会のペースを持ち込んでしまうが、果たして僕も、この映画の主人公のように「たそがれる」ことが出来るようになるのだろうか。

都会の生活に疲れ、離島気分を味わいたい方にはおすすめです!