映画「世界一キライなあなたに」の原作(洋書)である。この映画はAmazonプライムで無料で見ることが出来たので何気なく見てみたのだが、ストーリー、舞台となるイギリスの田舎町の映像の美しさ、イギリス英語の美しさ、そして音楽とどれもが素晴らしく、大好きになって何回も見た映画である。恋愛モノはあまり好きではない僕だが、この映画は今まで見た映画の中でもベスト3に入る。
元々英語好きで本の虫である僕は、無性に原作の洋書が気になったので購入して読んでみることにした。本作は世界中でベストセラーとなっているようだが、小説にしろ映画にしろ何故か日本ではあまり話題になっていなかったような気がする。ちなみに小説の日本語版のタイトルは『ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日』(ジョジョ・モイーズ)である。
あらすじを簡単に説明すると、お洒落好きの26歳の女性ルイーザ・クラーク(ルー)は、ある日働いていたカフェが閉店し、家計を支えるためジョブセンター(ハローワークのようなもの)で仕事を探すことになる。
大した経歴やスキルを持っていないルーは苦労の末、ようやく6ヶ月という期間限定の介護の仕事を見つける。介護の相手は、お金持ちでイケメンの青年実業家だったにもかかわらず、バイク事故の影響で車椅子生活になってしまった35歳のウィリアム・トレイナー(ウィル)だ。
指先のわずかな動きを除いて首から下は全く動かず、すっかり生きる希望を失ってしまったウィルは、元々の皮肉屋な性格も手伝って当初ルーに冷たく当たるが、天真爛漫なルーの性格が次第にかたくななウィルの心を開いていく。
正反対とも言える人生を送ってきた2人は少しずつ互いにかけがえのない存在になっていくが、ウィルはある決心をしており、彼に残された時間はわずかしかなかった・・・。
と、ストーリーは映画「最強のふたり」の恋愛版のようなものである。映画と小説では軸となるストーリーはもちろん変わらないのだが、500ページ弱もある小説では脇役の描写が細かくされており、ウィルの妹が出てきたり、ウィルの父親にも秘密があったりする。また、ウィルの両親に加えてルーの恋人であるパトリックも映画で見るよりも嫌な奴だったり、ルーと妹との喧嘩があったりと、主人公のルーはより可哀想な女という印象を受ける。
個人的には、ルーがウィルに会うためスイスに向かうラストシーンへの入り方が映画と小説では異なるのが興味深かった。映画の方がよりドラマチックな設定になっている。
映画を何回か見た後なので、小説を読み進めていると映画のシーンがまざまざと頭に浮かんできて読みやすい。Amazonのレビューでは英語は簡単などと記載されているが、イギリス英語の言い回し(多分)も多く、一応英語のプロでもある僕は1ページ内に1つでも分からない単語があると難しいと感じるので、村上春樹の洋書本なんかに比べると、それほど簡単だとは思えない。
いずれにせよ、お気に入りの映画の原作を読むことは英語学習に非常に効果的な方法だ。是非、映画も合わせて見て、映画との違いを楽しんで欲しい。
本作の舞台となったイギリスの田舎町、旅行先のアフリカの島国モーリシャス、そして最後のスイスにパリ・・・もいつか必ず訪れたい。映画のロケ地であるペンブローク城も魅力的だ。ウィルがルーに「widen your horizons」と言ったように、この作品もまた僕の視野を広げてくれたように思う。
映画・小説共に最も印象に残っているのは、パリでルーがウィルからの手紙を読むラストシーンだ。感動的な映画のシーンと相まって、ウィルの「Just live」という言葉は何度見ても涙腺が緩んでしまう。四肢麻痺によって普通に生きたくても生きることが出来なかったウィルだけに重みのある言葉である。人生を精一杯生きよう・・・そう思わせてくれる名作である。