香港の下町である油麻地(ヤウマテイ)の中ほどに、漁民の神様が祀られている天后廟(ティンハウミュウ、てんごうびょう)という廟がある。廟とは祖先の霊を祀る場所のことだ。他には孔子廟などが有名である。
香港には数多くの天后廟があるが、油麻地天后廟は、1865年に建てられたもので、九龍半島で最大規模の廟らしい。この辺りは埋め立てが始まる前は海に面しており、油麻地天后廟も以前は海辺にあったようだ。
油麻地天后廟の営業時間は公式サイト(英語)によると午前9時から午後5時まで。行き方(アクセス)は、油麻地駅C出口から香港のメインストリートである彌敦道(ネイザンロード)を南に歩いて徒歩数分だ。眾坊街(パブリックスクエアストリート)を入って左側にあるが、大きな公園があるので分かりやすいだろう。
油麻地天后廟前の公園では、昼寝をしたりゲームをしたりしている男たちがいる。なんだか大阪の下町っぽい風景だ。
公園の奥に天后廟の入り口があり、真っ直ぐ進むと道教の女神であり漁民の守り神である媽祖(天后)が祀られている天后古廟がある。
廟の中に入ると、大きな渦巻き線香が上から吊るされている。この渦巻き線香は観光客も購入することができ、紙に願い事を書いて奉納し、線香が燃え尽きると願いが叶うと言われているそうだ。見た目は壮観で良いのだが、灰が降ってきたり、服に匂いが付いたりするので何だか近寄りがたい。
なお、廟の中ではフラッシュ撮影、スタッフや参拝客の姿を撮影することは禁止されているようなので気を付けよう。
天后古廟の奥には、媽祖(天后)が祀られている。
油麻地天后廟には全部で5つの廟(書院を除くと4つ)があるが、既に紹介済みの天后古廟を除いて、左から順番にご紹介したい。まずは向かって一番左にある観音古廟。その名の通り観音様が祀られている。
続いて左から2番目にあるのが城隍廟(じょうこうびょう)。都市の守護神である城隍神が祀られている。まるで戦国武将のような凜々しい神様である。
真ん中の天后古廟を過ぎて、左から4番目にあるのが観音楼社壇。社壇(しゃだん)とは土地の神を祀る祭壇のことである。こちらも入り口の近くには渦巻き線香が吊るされ、奥には観音様が祀られている。
最後に一番右にあるのが書院。博物館になっているようで、中には様々な展示物がある。
油麻地天后廟は、ごみごみしている油麻地の下町の中にひっそりと佇む別世界だ。街の騒音と人の流れに疲れたら、天后廟を訪れ、まるで時が止まったかのような雰囲気を味わうのも良いだろう。
天后廟は夕方まで開いているが、夕方になると、天后廟周辺の廟街(テンプルストリート)で男人街(ナムヤンガイ)と呼ばれる有名なナイトマーケットが開かれるので、天后廟を訪れた後にナイトマーケットを散策するのもおすすめだ。