『司法書士 山本浩司のautoma system (4) 不動産登記法(1) 第5版』山本浩司:レビュー

『オートマシステム(automa system)』は、司法書士試験用の最もメジャーな参考書の1つだ。以前書いた「日進月歩~司法書士試験に向け『オートマシステム』で勉強再開~」の記事でも言及したように、僕は2年目からはこのシリーズを利用して独学で勉強している。

この第5版は2017年1月に刊行されたもので、2017年の司法書士試験に向けた最新版となる。『オートマシステム』は法律の改正等に合わせて頻繁に改訂版が出版されるが、僕は毎年改訂版が出るたびに購入しているというわけではなく、主に重要な法律の改正(近年の会社法の改正や会社法人等番号に関する改正など)があるときに購入するようにしている。

独学で勉強していると法改正に関する情報が入りづらいので、市販の参考書を購入するときは、出版日を必ず確認して最新の情報が反映されたものを購入する必要がある。

本書の旧版である2016年1月に刊行された第4版も去年の本試験前に購入したが、主にこの旧版との違いについて記載したいと思う。なお、『オートマシステム』の不動産登記法の択一対策は2冊から成り立っているので、2冊目の『司法書士 山本浩司のautoma system (5) 不動産登記法(2) 第5版』も含めたレビューであると思って欲しい。

結論から言えば、旧版の第4版を持っているのであれば、第5版に買い換える必要はないように思う。この第5版は大幅に加筆されていて、特に図が多用されて分かりやすくなっており、また、平成28年度本試験の過去問も収録されている。しかし、基本的な内容に大きな変更点はないようなので、もうすでに何度も本を読み込んで合格レベルにあるような方は、図がなくとも理解出来ているだろうし、今更改めて買い換える必要はないだろう。

もちろん、改訂版は誤植や誤記は多いものの図解が充実していて分かりやすく、全体的に旧版より良いと思う。なので、金銭面を気にしない方であれば購入するに越したことはない。予備校の受講料に比べたら遙かに安いかもしれないが、1冊3,000円前後と、買い揃えようと思ったら結構な金額になるので、僕にとってはかなりの痛手だ。

会社法人等番号について書かれていない第4版より前の版しか持っていないのであれば、最新版を購入した方が良いだろう。会社法人等番号はそれほど難しい内容ではなく頭で考えればすぐに理解出来る。しかし、司法書士試験(特に記述)は1分1秒を争うので、感覚で当たり前に理解しておく必要がある。ちなみに、去年(平成28年)の司法書士試験の不動産登記法記述は会社法人等番号のオンパレードであった。

また、これは『オートマシステム』シリーズの特徴でもあるが、前述したように最新版の本書でも相変わらず誤植や誤記が多い。特に、今回加筆された部分にかなり目立った。著者は毎年の改訂作業で忙しく時間がないのは分かるが、出版前のチェック体制はしっかりして欲しいものだ。

『オートマシステム』が好きで読んでいる僕としては誤植や誤記に慣れてしまって今更気にならず、間違いを見つけるのも楽しみの1つだったりするのだが、学習初心者の方であれば、間違いに気づかないまま読み進めてしまうこともあるだろう。大した事がない間違いも多いが、中には試験結果に影響を及ぼしかねないような間違いもあるので、正誤表は必ず確認した方が良い。

さて、僕がこの『オートマシステム』を愛用している理由であるが、1つはサイズが予備校で使用されていたA4サイズの参考書よりも小さく持ち運びがしやすい点(外でも参考書を開くことが多く、このサイズだと外から見れば単に読書をしているようにも見える。人前で勉強するのは何となく恥ずかしい。)、もう1つは重要な過去問も収録されているので別途過去問の参考書をやる必要がない点(『オートマシステム』シリーズには別途過去問対策専用の参考書もある)、そして最後に、これが1番の理由であるが、本書の著者(文章)との相性が良いことであろう。

『オートマシステム』シリーズの著者である山本浩司さんは司法書士試験対策予備校の早稲田セミナー(TAC)の専任講師で、東京大学法学部卒業、そして司法書士試験に6ヶ月の勉強で一発合格した秀才だ。

この人の書く文章はとても分かりやすく、まるで物語を読んでいるような気分になることもあり、スラスラと読み進めることが出来る。以前予備校の授業で使用していた参考書は文字の羅列と言った感じで読んでいて面白みがなく、講師の解説がなければいまいち理解出来ない箇所もあったが、『オートマシステム』を読んで深いところで理解出来るようになった箇所も多い。本書は司法書士の実務家らしい考え方で解説されており、ただ単に記憶するだけでなく、法的思考(リーガルマインド)を養うことが出来たように思う。

『オートマシステム』を読み始めた当初は、事例を用いて分かりやすく書かれている分、情報量が少ないのではないか?という懸念もあったのだが、過去2年の本試験を受けてみて、その懸念は杞憂であることが分かった。まぁ、試験には残念ながらあと一歩のところで落ちたのだが、このシリーズだけ(もちろん、六法は必要だが)で十分合格点を取れるという確信を得ることが出来た。

読書と同じように、受験参考書もやはり相性が大事だ。司法書士の試験勉強は辛くて長い旅でもあるが、『オートマシステム』シリーズを利用して少しでも楽しみながら勉強を続けられたら良いと思う。