高松市に滞在中、高松市美術館で開催されていた上田薫展を訪れた。
残念ながらこの記事を執筆中には既に開催が終了しているのだが、高松市美術館は初訪問で上田薫展は写真撮影可だったので以下に写真と共にご紹介したい。
高松市美術館は市街地中心部に位置しており、JR高松駅からも徒歩圏内だ。
高松市は高槻市よりも人口が多く(ちなみに人口は約42万人)都会だが、歩道が広いにもかかわらず車社会なのか人通りが少なく歩きやすい。
街並みは綺麗だし、離島や美術館もありなかなか良い環境である。
美術館に入り、受付で観覧料の1,200円(一般)を払って入場する。
京阪神の大きい美術館よりも安い印象を受けるが、これは高松市美術館が割安なのか本展覧会が割安なのかは不明である。
上田薫(うえだかおる)は、写真を用いてリアルに描くスーパーリアリズムの画家で、たまごやゼリーなど身近なモチーフを中心に描いている。
この展覧会に来るまで名前も知らなかった(教科書で見たことがあるかも?)のだが、高松市で美術館に訪れたいと調べていたところ、たまごの絵が目に留まって本展覧会を訪れることにした。
この日は土曜日で天気が良かったにもかかわらず、高松市街地同様、展覧会もひとけが少ないようである。
上田薫は1928年東京出身で東京藝術大学を卒業後、デザイン会社を設立しグラフィックデザイナーとして活動した後、40歳くらいの頃より絵画に専念するようになったようだ。
色合いが綺麗で美味しそうな食べ物の絵が多いが、やはりこの展覧会の目玉は何点か描かれているたまごの絵だろうか。
殻を割った瞬間のたまごの絵などは、現実ではほとんど目にできない瞬間なのに、それを絵画にしているのは現実的であって現実的でないとも言える。
上田薫の代表作品であるたまごを割った瞬間の絵にも惹かれるが、僕は以下の絵に一番惹かれた。
黄身があまりにも美しく、たまご好きとしてはずっと見ていられる。
君は本当にあの黄身なのですか。
彼の作品は惹かれるものが多いのだが、しかしかのゴッホでさえ生前は貧困に苦しんでいたというのに、このような写実的な絵画で画家としての生活は成り立つのであろうか。
飲食物の絵画以外には広告や風景画なども手がけていたようである。
とりわけ、キャンバスを分けて描かれた巨大な風景画には目を奪われるものがある。
出口の近くでは、上田薫のドキュメンタリー番組を放送していた。
彼は現在90代で認知症を患っているようだが、まだまだ受け答えははっきりしていて執筆活動も続けているらしい。
ゴッホや佐伯祐三のような早熟で早世の天才と違って、画家としては遅咲きの部類に入るであろう上田薫だが、遅咲きの人は長生きするという印象がある。
まだ咲いていない僕もひょっとすると100歳くらいまで生きられるかもしれん。
高松市美術館の1階にはカフェとこじんまりとしたショップがある。
ショップで販売されていた上田薫展の図録はなんだかパンフレットのようで薄っぺらく、図録コレクターとしてはやや残念だったのだが、せっかくなので購入して買えることにした。
高松市美術館にあるカフェは、美術館内のカフェというよりも食堂&喫茶店といったいかにも田舎らしい雰囲気である(そもそも、名前も「食堂&喫茶たかまつ」だ)。
カフェのランチメニューにも惹かれたのだが、この日はせっかくの高松なので帰りにうどんを食べて帰ることにした。
適当にうどんで検索して近くのうどん店にやってきたのだが、「手打ちうどん風月」というかなりの人気店を引き当てたようだ。
初の高松市美術館、そしてボリュームたっぷりのうどんに満足して帰ることにした。
高松市美術館、2023年9月30日からは国立美術館巡回展、そして2024年1月24日からは川瀬巴水展が開催予定である。
川瀬巴水展は気になっているので、また来年の1月か2月には高松を訪れようと思う。