アフターコロナで読んだ本まとめ㉓

原爆ドーム

はじめに

スシローでしょうゆ差しをペロペロした動画が拡散された少年に約6700万円の損害賠償が請求されたそうで。

刑事でも威力業務妨害罪や器物損壊罪に問われるのかな?

大企業であればそれだけの損害額が発生してもおかしくはないしスシローが請求するのも当然のことなのだが、ネット上で拡散されたのも一因だろうし、昔なら家族や店主にこっぴどく叱られて済んでいたかもしれないことを思うと、やや気の毒な気もする。

高校生なんてまだまだ子どもだし、例えば幼稚園児や動物、あるいは精神障害者が同じことをしても嫌悪感はともかく許したい気持ちになるだろう(法律上も保護者に対する損害賠償請求はともかく刑罰は科せられない)。

スシローのような大企業と一般人では力の差がありすぎるし、スシロー側は訴訟を起こすのが容易でも恐らく少年側は弁護士を雇うのもやっとだろうし、訴訟に伴う精神的・経済的負担も甚大なものになるだろう。

損害を賠償するのも罪を償うのも当然のことなのだが、大企業と多くの無関係な大人が1人の少年をよってたかって攻撃するのは正義の観点から見て公正とは言えず、加害者の人権にも配慮する必要があるように思える。

殺人の慰謝料でも数千万円なのに、しょうゆ差しペロペロと殺人ではあまりにも不釣り合いな気がしてならないのだ。

誰でも若いうちにふざけたことはあるだろう。

「日本人は集団で弱い者を徹底的に叩く」と『はだしのゲン』でも描かれていたように思うが、ネット上で必要以上に叩いている人間は、少年が前科や莫大な借金を背負ってやり直しがきかなくなっただけでなく、本件が原因で家族も職を失い、一家離散で自殺者でも出たらどう思うのだろうか。

しかし、件の動画を初めて見たけれど、学生時代にヤンキーに嫌がらせをされたことを思い出したわ。

スシロー側だけでなく少年側にも被害者的側面があるこの事件、判決に期待です。

『はだしのゲン』中沢啓治


出典:amazon.co.jp

著者の体験を元に、原爆(ピカ)が落ちた広島で家族を亡くしながらも戦中戦後に逞しく生きる少年達を描いた物語。

小学生の頃、図書館にある数少ない漫画の1つだったこともあって読んだら衝撃を受けたことを覚えているのだが、同じような人も多いのではないだろうか。

最近、広島市教育委員会が小学生向けの平和教材から『はだしのゲン』を削除することを決めたことが話題となり、久しぶりに読み返したくなってKindle版(上記リンク)で一気読みした。

物語は原爆を落とされる直前の広島から始まるのだが、「ピカ」と呼ばれる原爆の被害にあった人は皮膚が垂れ下がり、ガラスの破片が身体中に突き刺さり、やけど跡からはウジが湧き・・・と、悲惨な原爆被害の様子が鮮明に描写されている。

ゲンのように原爆が落とされたときにたまたま塀の陰にいたりして原爆やその後の家屋の倒壊および火災から生き延びた人たちも、食べるものもろくにない戦後において、栄養失調、そしてケロイドや原爆症による内臓疾患に苦しみ次々と命を落としていく。

原爆や戦争の恐ろしさを嫌というほど伝えてくれる本だが、戦争に反対するのは非国民だと捉えられていた戦時下において「戦争は駄目だ。みんなが仲良くしなきゃならん」と熱く語っている主人公の父親が、気に入らないことがあると平然と家族や周囲の人間に暴言を吐いたり暴力を振るったりしているのには矛盾を感じた。

その他にも体罰の描写や、「き○がい」「こ○す」など時代柄なのか危険な言葉遣いがあり、なんとなく小学生に読ませたくないのも分かる気がする。

また、実際に戦争と原爆の悲惨さを体験した人であればこのような気持ちになるのはしょうがないだろうが、軍部や政府、アメリカ軍への反発など左寄りだと思われる描写も多く、中には君が代や天皇を冒涜する描写もある(君が代や天皇は戦争のはるか以前からあり、軍事利用されただけだと思われる)。

「核や軍隊を持つのは戦争を起こさないためだ」と軍部の暴走により家族を失った人たちに言ったところで、頭では理解できても戦争や原爆には無条件で拒否反応を示すのではないだろうか。

久しぶりに読んだ『はだしのゲン』、中盤以降はマンネリ感があるが、日本人としては必ず読んでおきたい歴史的な漫画である。

『テムズとともに──英国の二年間』徳仁親王


出典:amazon.co.jp

今上(きんじょう)天皇が約40年前の皇太子時代にイギリスのオックスフォード大学に留学した際の記録。

当然と言えば当然なのだが、警護官が付いていたり王族や貴族、学長などに面会して歓迎されていたりして、一庶民の留学とは異なるものである。

学生生活の合間にパブにも通われているものの、「やべぇ、このフィッシュアンドチップス超うめぇ」などの某ブログにありそうな表現はもちろんない。

それでも、オックスフォード大学で一般の学生に混じって、異国での生活に奮闘する若き日の天皇陛下の姿がよく描かれている。

テムズ川をテーマにした研究生活、オックスフォードでの友人との学生生活、音楽活動、スポーツ活動、ヨーロッパ各地への旅行など・・・。

本書は評価は高いものの読み物としては正直あまり好みではないのだが(天皇陛下だとさすがに表現にも制約があるだろう)、天皇陛下の素顔が知りたい方、オックスフォード大学への留学に興味がある方は是非。

『裁判官の爆笑お言葉集』長嶺超輝


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いわゆる「法曹三者」と呼ばれる裁判官・検察官・弁護士。

裁判官と検察官は司法試験合格者の中でも上位層がなると言われており、「何ものにも染まらない」黒色の法服を着た裁判官はとりわけ堅物のイメージがある。

そんな裁判官、ただ機械的に判決文を読み上げるだけではなく、説諭(せつゆ)などを通して、時にはさだまさしの曲を引用したりして愛情たっぷりのお言葉や厳しいお言葉を投げかけてくれる。

裁判官の感情を露わにした名言集は楽しく読めたが、本書の著者は旧帝大の法学部出身にもかかわらず、(おそらく)ガチで勉強して司法試験に7回不合格した後ライターになった人物で、旧司法試験の恐ろしさも改めて知ったわ。

『ギフテッドの光と影 知能が高すぎて生きづらい人たち』阿部朋美、伊藤和行


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朝日新聞デジタルで連載された、いわゆる「ギフテッド」たちのインタビューを通じてギフテッドの実情に迫る本。

2E(twice-exceptional)と言って、高知能だと発達障害などを併発しているケースも多いのだが、そうでなくても高知能だと周囲の人と合わず学校生活や社会生活において生きづらさを抱えることになる。

本書ではウェクスラー式知能検査(WAISやWISC)の数値にも言及されているが、ギフテッドを取材してきた著者によると、ギフテッドとは本書の冒頭に登場する少年(IQ154、小4で英検準1級に合格)のような必ずしも超人的な能力を有する人ばかりではなく、IQ120~IQ130程度(クラスに1~2人くらいいるイメージ)の人たちにも多いと言うのだ。

周囲の健常者よりもはるかにできが良く、自分ができることを隠し続けたIQ140のろう者である女性の記事も掲載されているが、IQ140はWAIS-IVの平均値ではなく、IQ140なのは「処理速度」のみで、「知覚推理」はIQ117とやや高いものの、「言語理解」はIQ98、「ワーキングメモリー」はIQ95と平均よりも低い。

僕のWAIS-IVの値は「処理速度」がIQ140、「知覚推理」がIQ118、「言語理解」がIQ106、「ワーキングメモリー」がIQ131と、いずれの値もこの女性より同等以上である。

彼女がハンデを抱えているにもかかわらずこの数字を出すのは凄いしIQだけで一概にギフテッドかどうかも判定できないのだが(そもそも、「ギフテッド」の定義が曖昧である)、これならひょっとすると僕もギフテッドかも知れないなぁ。

まいったまいったマイケルジャクソン。

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やっぱりギフテッドともなるとおやじギャグのキレも違うな。

まぁ、パクリだけどな。

「凡人は模倣し、天才は盗む」byピカソ

しまったしまった島倉千代子。