大阪中之島美術館で2023年4月15日(土)~6月25日(日)まで開催されている『佐伯祐三 ― 自画像としての風景』展を訪れてきた。
佐伯祐三(さえきゆうぞう)は、今からおよそ100年前に大阪・東京・パリの3つの街で活動し、30歳の若さで亡くなった洋画家である。

西洋絵画の展示会なんかに行くと佐伯祐三の名前はたびたび目にするものの、正直言ってそこまで印象に残っている画家ではなかった。
ただ、大阪中之島美術館はロケーションや雰囲気も含めて好きな美術館ということもあって、何らかの絵画の展示会が開かれたら訪れることにしている。

本展示会では一部の作品を除き写真撮影が可能だったので、以下に写真と共に展示会の様子をご紹介したい。
大阪中之島美術館はJR福島駅から南に10分ほど歩いたところにある。

10時の開場時間前に美術館に到着し、券売機でチケット(一般1,800円)を購入。
この日はGW中の平日だったのだが、開場の10分前になってもまだ誰も列に並んでおらず、一番前に並ぶ。
アートをこよなく愛するやる気満々のおっさんみたいである(笑)。

西洋絵画の展示会は比較的年齢層が高い傾向にあるが、この日は平日ということも加わってか、ご年配の方がとりわけ多かったように思う。
佐伯祐三は大阪市出身で現在の北野高校を卒業した後、東京美術学校(現在の東京藝術大学)で西洋画を学び、その後妻子と共に渡仏してパリの街並など風景画を中心に描いた。

本展示会では佐伯祐三が住んでいた東京の下落合(現在の新宿区)の風景画もいくつか展示されており、当時ののどかな情景を知ることができる。

うーん、佐伯祐三の絵は嫌いではないんだけど、全体的に色使いが暗いんだよなぁ。
何か嫌なことでもあったんですか?
まぁ、身近な人が結核や自殺で次々と亡くなって、本人も結核に蝕まれていたから明るくなれという方が無理かもしれんけど。

しかし、イケメンで才能に恵まれているにもかかわらず、精神を病んで30歳の若さで亡くなるなんて、どこか太宰治を連想させるな。

佐伯祐三は2回に渡る渡仏でパリ滞在は合計で約3年だったが、生き急いでいたのか多作家で1日に何作も描くことがあり、パリの街並を中心に数多くの魅力的な作品を残していることが分かる。

それにしても、第二次世界大戦前の飛行機も情報もろくにない時代に、時間をかけてフランスまで渡り異国の地で生活するのは今とは比べものにならないくらい大変だっただろうなぁ。

本展示会では大阪や東京で描かれた絵画も数多く展示されているが、やはり目を引くのはパリ(およびその郊外)で描かれた絵で、死期が近づくにつれて西洋絵画の巨匠を彷彿とさせる完成度の高さになっていくように思う。

個人的には、最後の作品とされる『黄色いレストラン』が一番好きかな?

佐伯祐三は最後、結核と精神衰弱が原因でパリ郊外の精神病院に入院し30歳の若さで亡くなっているが、娘の彌智子も父の死のすぐ後に結核で亡くなっている。
当時の人にとって結核は恐ろしい病気で、今のコロナ禍とは比べものにならないレベルだったのかもなぁ。

1時間半ほどかけて見て回った後、出口の先にあるグッズショップでお土産を購入。

お決まりの図録、関係はなさそうだが何故か惹かれた猫型スプーン(事務所の来客用)、そして事務所にあると役立つ一筆箋をチョイス。
美術館のお土産は増えるばかりなので、図録以外はだんだんと実用的になっていくようである。
ちょうど12時頃だったので、大阪中之島美術館の1階にあるレストラン「ミュゼカラト」でランチをいただいて帰ることにした。

クリームパスタとパンセット。
パスタはお値段1,320円と美術館にしては高いわけでもなく、味も上品で美味しいんだけど、高級フレンチよろしくパスタの量がやや控えめなのが成年男子にはちょっと物足りないかな。
佐伯祐三もパリで妻子と友人に囲まれパスタを食べていたのだろうか。

それはともかく、日本を代表する洋画家・佐伯祐三の短いながらも濃密な人生を知るにつれ、お気に入りの画家の1人になりました。

佐伯祐三の生き様と作品が存分に味わえるこの展示会、油絵が好きな人は十分に楽しめると思うので、まだの人は是非足を運んで欲しい。