目次
はじめに
2年ぶりに宮古島を訪れようと、ANAの飛行機に乗り込んだところ事件が発生した。
事前に予約しておいた最後列窓際の座席の下に、ゲロのようなものを発見。ゲロゲーロ。
すかさず乗務員を呼んで掃除してもらったのだが、シートを敷いてもらってもなんだか気持ち悪いし、空いていた別の座席を提案されたのでそちらに移動することに。
3人掛けの真ん中の座席はあまり好きではないものの、宮古島行きの飛行機からの景色なんて飽きるほど見てきたし、2時間ちょいのフライトで本を読んでいたらすぐに到着したのでそれほど気にはならなかった(真ん中の座席だと、両隣同士が知り合いの可能性が低くて静かなので意外と良いかもしれない)。
僕はただ単に汚れを指摘しただけで文句を言ったわけでもないのだが、乗務員は平謝りだしチーフパーサーまで挨拶に来るわで、やっぱりANAはそれなりにしっかりした会社だと思ったわ。
コロナ禍の自粛で旅行の感がすっかり狂ったのか、他にもスーツケースの重量が預け入れ荷物の20kg制限を超えてチェックインカウンター近くで荷物をガサガサ移し替える羽目になるという今まででは考えられない醜態を演じてしまったり、移動中大雨に降られてしまったりと、どうも久しぶりの宮古島には歓迎されていないようである。
それでも、宮古空港に着いてカツオだしのきいた宮古そばを食べると、故郷に戻ってきたようなホットした気分になるから不思議なものである。
到着した翌日も雨で何もやることがないのだが、来年への鋭気を養うと共に、しばらくは「何もしないことの贅沢」を楽しみたいと思う。
『限りある時間の使い方』オリバー・バークマン
出典:amazon.co.jp
「効率性を追い求めたところでさらに忙しくなるだけだ」と、一見その他の自己啓発本やライフハック本とは違うことを言っているようだが、結局は重要なことにフォーカスして(退屈な)現実に向き合うというさほど変わらないことが書かれているように思う。
ただ、恋愛の項で「色々な人間に会うよりも妥協して1人の相手を選んでコミットした方が幸せになれる」とか、「理想の相手を追い求めてマッチングアプリを10年使用するのも、現実から逃れるための妥協である」とか書かれていたのが印象に残っている。
ベストセラーになっているだけあってそれなりに楽しめたけど、タイトル通りの内容を期待するのであれば、本書でもたびたび引用されている古代ローマの哲学者・セネカの『人生の短さについて』を読んだ方が良いかな。
それにしても、「時間」って一体何なんでしょうね。
『私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記』水谷緑
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ヤングケアラーとは、家族が障害や病気などを抱えており、家族に代わって家事や介護を担う子どものことで、本書ではヤングケアラーである女性の人生がマンガによって描かれている。
本書の主人公であるゆいちゃんは母親が統合失調症で祖父も認知症であり、幼い頃から母親に代わって家事を担ってきた。
母親からは暴言を吐かれたり包丁を持って追いかけられたりして、忙しい日々に追われて学校生活にも支障を来し、普通の子どもとは話が合わずにやがて感情を失っていく。
その後、入院生活を得て大学に入って自立生活を送るようになり、看護師となってからは社会生活に困難を抱えながらも結婚をして子どもにも恵まれ、ようやく幸せな生活を手に入れたかのように思える。
しかし、自分の子どもと接していると自分自身の小さな頃の嫌な思い出がフラッシュバックでよみがえってくるようになり、子育てにも支障を来すようになる。
ゆいちゃんが頑張り屋で可愛くつい感情移入してしまい、最後は自分自身を母親の姿に重ねる彼女の姿に涙が止まりませんでした。
ヤングケアラーについての理解が深まるおすすめの良書。
『脳科学者の母が、認知症になる』恩蔵絢子
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脳科学者として大学で講義を行う著者による、脳科学的知見を交えて認知症になった同居の母親との記録を綴った一冊。
1979年生まれの著者は、生まれてから一度も実家を離れたことがなく、自身は勉学などにいそしみ料理や家事などを母親に任せきりにしてきた。
その母親がアルツハイマー型認知症になったのだから大変で、母親の世話、料理や家事などを通じて、別人のようになっていく母親との関係を再構築していく。
実はNHKの認知症を特集した番組でこの著者と母親が紹介されていて本書に興味を持ったわけだが、最近はNHKも認知症の特集が多く、それ自体は良いことだがこの前は後見人を務める司法書士が悪者扱いされていてガックリきたところである。
「記憶を失いそれまでできていたことができなくなってもその人はその人なのか」と問う本書、認知症について興味深い考察がされているのでおすすめだ。
『プリズン・ドクター』おおたわ史絵
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著者は父親が開業医で、母親や周囲の期待もあり当たり前のように医師になったが、過酷な研修医時代を経て体調を崩し引きこもるようになる。
その後は本を書いてメディアにも出るようになり、やがて父の医院を継いだ後、法務省の矯正医官として働き始める。
矯正医官とは、刑務所、拘置所、少年院などの矯正施設で働く医師のことである。
本書では、外の世界と異なり医療機器や薬の少ない刑務所で医療に奮闘する様子、入れ墨が当たり前に入っていたり知能指数、養育環境に問題があったりする受刑者たちの様子が描かれている。
まぁ、囚人の様子に関しては刑務所で働く精神科医や実際に刑務所に収容されている人の本にも詳しく書かれているから真新しさはなく、もう少し医師(女医)としての視点から書かれたものが読みたかったところである。
刑務所内の様子やレアな存在である矯正医官に興味がある方は是非。