【ベストコレクション展】京橋駅の近くに新しく移転した山王美術館を訪問

山王美術館の外観。後ろにあるのがホテルモントレラ・スール大阪

2022年9月2日に京橋駅近くのホテルモントレラ・スール大阪敷地内に新しく移転オープンした山王美術館を訪れてきた。

この山王美術館、ホテルモントレ株式会社の創立者が収集したコレクションを展示する美術館で、元々はホテルモントレグラスミア大阪22階にあったらしい。

2022年の秋から冬にかけて関西では西洋画のめぼしい展示会が見当たらなかったので、大阪で美術館がないか探していたところ、フランス近代絵画が展示される山王美術館の「ベストコレクション展」が目にとまった。

山王美術館を代表するコレクションが一堂に展示される「ベストコレクション展」は、2022年9月2日(金)~ 2023年1月30日(月)に開催されている。

山王美術館「ベストコレクション展」

山王美術館「ベストコレクション展」

山王美術館の最寄り駅はJR京橋駅だ。

JR大阪駅で環状線に乗り換えて京橋駅へと向かう。

最近は美術館巡りなどで大阪環状線に乗る機会が増えてきたのだが、大阪環状線に乗るたびに民度の低さを感じてしまう。

乗客の多さのせいもあるかもしれないし、ごく普通のサラリーマンやOLが目立つJR京都線の新幹線スタイルの座席に慣れているせいもあるかもしれない。

歩きスマホの比率が高いし、西成のドヤ街から出てきたような服装からして怪しげな人をしばしば見かける。

最近は僕も外に出る機会が増えたので思うのだが、コロナ禍で自宅に引きこもりスマホ依存症になった若者がそのまま外に出てきているような印象を受けるんだよなぁ。

コロナ禍前はこんな感じだっただろうか、とふと思い返してみたが、そもそも自宅で仕事をしている以外は旅に出ていたから大阪の街の様子なんて覚えていないわ(笑)。

旅行も美術館巡りも好きだけれど、感覚過敏の僕は公共交通機関や人混みが苦手なんだよなぁ。

京橋駅から山王美術館までは寝屋川を渡って徒歩で5分程度。

寝屋川(一級河川)。左手に山王美術館が見える

寝屋川(一級河川)。左手に山王美術館が見える

京橋に来るのは随分と久しぶりだが、大阪らしい飲み屋街で、どことなくカオスなイメージがある。

山王美術館があるこのエリアは大阪ビジネスパークと呼ばれているそうだ。

丁度お昼休み時に訪れたのだが、美術館に向かって遊歩道を歩いていると、川沿いでは死んだ魚の目をしてタバコを吸いながらスマホをいじっているビジネスマンたちがたむろしていた。

スーツは着ているものの、その雰囲気はまるで日雇い労働者が集まるドヤ街のそれである。

せっかくの川沿いなんだから、テラス席がある飲食店でもオープンして、フランス人みたいに「AHAHA~」とか言いながら昼間からワインでも飲んでいた方が人生も楽しくなって生産性も上がると思うのだが。

人間観察の前置きが長くなってしまったが、周囲のオフィス街に溶け込む5階建てのシックな山王美術館に到着。

山王美術館の外観。後ろにあるのがホテルモントレラ・スール大阪

山王美術館の外観。後ろにあるのがホテルモントレラ・スール大阪

1,300円の入館料を支払って入館する。

移転オープンしたばかりの新しい美術館である

移転オープンしたばかりの新しい美術館である

「ベストコレクション展」は3~5階で開催されていて、5階までエレベーターで上がって5階から順番に降りてくる形になる。

5階は近代日本画のコーナーで、上村松園や横山大観などの絵画作品が20数点展示されている(陶器なども何点か展示されている)。

油絵好きとしてはそれほど日本画には惹かれないのだが、横山大観は有名なだけあって、『東山』とか『日本心神』とかなかなか目を奪われる絵画があった。

山王美術館は1階ごとのスペースがそこまで広いわけではなく、四角いフロアの壁に20~30点の作品が展示されている感じ。

「ベストコレクション展」は宣伝広告などを見かけないこともあってか、先客は1人だけと静寂に包まれていて快適だったが、後から数名のお客さんが入ってきた。

平日の美術館ではお馴染みの老人や主婦層がほとんどである。

入館したのは1時過ぎだったと思うが、恐らくは「お昼ご飯食べてから美術館でも行こか」のパターンだろう。

個人的には、美術館を訪れるのは平日の11~12時くらいが人も少なく、かつ空腹で感覚も研ぎ澄まされているのでベストではないかと考えている。

4階に降りると、この日の最大の目的だったフランス近代絵画が30点ほど展示されていた。

シスレー、ルノワール、モネ、ボナール、キスリング、藤田嗣治など。

『登り道』とかサン=マメスの風景とか、シスレーの絵は結構良かったなぁ。

ルノワールも『裸婦』など女性画を中心に何点か展示されていたけれど、ルノワールの絵ってなぜかあまり惹かれないんだよな。

この中で一番好きな画家であるモネの絵は、『睡蓮』のような絵があるのかと思いきや、なんだかモネらしくない4人の子どもの顔を描いた絵が1点あるだけだったのでちょっと残念。

藤田嗣治(ふじたつぐはる)は絵画展ではよく名前を目にする日本生まれのフランス画家だが、さすが日本人だけあって、どこかジブリやベルセルクを連想させる『家馬車の前のジプシー娘』が印象的だった。

いやー、やっぱり脂っこいおっさんには油絵がしみじみと来るわ。

各階には数人程度と人も少なく快適だったので、ソファに座って休んだりしながら、2周してゆっくりと見て回る。

ここ最近は仕事と勉強が忙しく肩甲骨のあたりを痛めてしまったので、ほとんど何も入っていないにもかかわらず、バッグを持っている左腕が痛くなってきた(笑)。

最後の3階には、日本近代洋画が展示されている。

日本の近代化に伴って西洋絵画を学んだ人たちの作品のようだ。

中でも本展示会の目玉でもある、1895年以来の公開となる黒田清輝の大作『夏(野遊び)』は素晴らしいものだった。

これね

これね

他には教科書でお馴染み・岸田劉生の『麗子肖像』や佐伯祐三『パリの街角』など。

日本人は美的感覚が優れていると思っているし西洋絵画に影響を受けて油絵を描くのは分かるのだが、モデルまで白人になっているのがどこか笑える。

油絵はやはりモノトーンな日本ではなくカラフルな海外の人物や風景を描くのに適しているのだろうか。

1時間以上かけてゆっくりと見て回り、そろそろ帰ろうかというところ、執事っぽい雰囲気のおじいちゃんとロリータファッションの20歳前後と思わしき不釣り合いなカップルが入ってきた。

祖父と孫かとも思ったが、身体を触っているし、これはパパ活ならぬジジ活ではないかという僕の直感が告げていた。

しかし、おじいちゃんがマッチングアプリやSNSをフル活用できそうもないし、どこかの権力者が業者を通じてジジ活の相手を探しているのではなかろうか。

これは、ホテルに併設している美術館ならではかもしれない。

美術館のどこか異世界で神聖な雰囲気の中、あまりにも俗世的な欲望を感じさせるそのカップルが気になって、最後の方は絵画よりもそっちの方に目が行ってしまったわ。

草木が生える

草木が生える

山王美術館にはレストランやカフェはないのだが、1階にはこぢんまりとしたショップと無料でコーヒーなどが飲める休憩スペースがある。

お土産に図録(展示作品のカタログ)と事務所でメモ代わりにでも使用しようと一筆箋(いっぴつせん)を購入した。

図録(2,750円)と佐伯祐三『パリの街角』の一筆箋(440円)

図録(2,750円)と佐伯祐三『パリの街角』の一筆箋(440円)

新しく移転した山王美術館、「ベストコレクション展」はなかなか楽しめたので、絵画好きの方は是非。

美術館を後にして、人混みから逃れるようにそそくさと地元に帰ってきたけれど、小籠包が美味しい季節だし、梅田に立ち寄って小籠包食べれば良かったなぁ。

カルボナーラと白ワイン。西洋絵画の鑑賞後はなぜか西洋っぽいものが欲しくなる

カルボナーラと白ワイン。西洋絵画の鑑賞後はなぜか西洋っぽいものが欲しくなる(笑)