アフターコロナで読んだ本まとめ④

安倍さんが表紙のTIME誌。しばらく事務所に飾ります

はじめに

安倍さんが亡くなってから今日で1ヶ月。

あの日、僕は事務所で仕事をしていて、お昼時にヤフーをチェックするとトップ画面もリアルタイム検索も安倍さん一色になっていた。

ニュースや動画を見ると居ても立ってもいられなくなり、仕事を早々と切り上げて自宅に戻り、祈るような気持ちでテレビを見ていた。

野党やメディア、国民にまでボロクソに言われ、挙げ句には言いがかりのような理由で銃で撃たれて亡くなるなんて、最後まで(いや、死んでもなお)周りに足を引っ張られた人だったように思う。

旧統一教会と関係があったとしても、銃で殺害されて良い理由にはならんだろ。

僕は別に自民党の支持者ではないしカルト宗教も生理的に受け付けない人間だが、安倍さんは数少ない能力のある政治家だと思っていたし、近年では一番親近感を持てる好きな政治家だった。

日本人が苦手な外交でも活躍していたし、トランプ、習近平やプーチンなどのくせ者に囲まれてあれだけ存在感を発揮できる首相なんて当分出てこないんじゃないだろうか。

「国葬反対」などと騒がれたりもしているが、信条が違ったり好き嫌いはあったりしても、日本のために長年尽力してきて銃で殺害された元総理大臣に対して敬意すら示せないのであればどうなんだろう。

もちろん、日本国憲法で定められた政教分離の原則に基づいて自民党と旧統一教会の関係は追求されるべきだとは思う。

でも、僕は、日本がウクライナやウイグルのようにならず日本人が日本人として誇りを持って安心して暮らしていけるのであれば、税金が多少高くても、政治家が多少汚いことをやっていたとしても国益のために働いているのであればそれで良いと思っている。

終わりの見えないコロナ禍の中、ウクライナでは戦争が終わらず中国は台湾に向けてミサイルを発射するし、経済、外交、国防で戦後最大の危機とも言える時期に一番頼りになる人が亡くなって不安だし、そして何よりも安倍さんがいないのは寂しいよ。

『TIME 2022年7/25・8/1号』Time Magazine Hong Kong Limited


出典:amazon.co.jp

安倍さんが亡くなった後、TIME誌が次号の表紙を安倍さんにすると発表したので、無性に欲しくなってきた。

しかし、Amazonなど日本のネットショップで探しても見つからず、世界中のネットショップに対象を広げて探していたところ、アメリカのeBayで(定価よりかなり高い値段で)在庫が3つだけ残っていたのを見つけてあわてて確保。

ところが、楽しみに発売日が来るのを待っていたところ、出品者から以下のようなメッセージが届いた。

「Mr. Shinzo Abeが表紙のTIME探したけど売っていなかったよ。ごめんね。元気出して!」

ショックだ。どうやら、安倍さんが表紙のTIME誌は部数が限定されているらしく、それ以外は別の表紙になるらしかった。

TIME誌も欲しい人全員に行き渡らないのであれば、カオスになることが分かっているのに「次号の表紙は安倍さんにする」なんて公に発表しないで欲しいものだ。

結局、発売日後にヤフオクで出品されている新品を6,500円(定価の5倍弱)の値段で落札した。

安倍さんが表紙のTIME誌。しばらく事務所に飾ります

安倍さんが表紙のTIME誌。しばらく事務所に飾ります

ちなみに、TIME Cover Store というTIME誌の表紙を販売しているサイトを後から見つけたのだが、良かったのか悪かったのか、このサイトでも安倍さんの表紙ではなく通常の表紙が販売されているようだ。

TIME 2022年7/25・8/1号の通常の表紙

以前はTIME誌を英語の勉強用に定期購読していたのだが、英語は難しいし日本人には興味が湧かない記事も結構あるので、結局購読するのを止めてしまった(代わりにNational Geographicの購読を始めた)。

もちろん、本号では3ページほど安倍さんの記事が書かれていて、他の記事はウクライナ情勢や世界の素晴らしい場所の特集など。

TIME誌は今回の件でちょっと嫌いになったけど、本号は英語で安倍さんの記事を読んでみたい人はもちろん、旅行好きの人には良いんじゃないかな。

『ルポ・収容所列島: ニッポンの精神医療を問う』風間直樹、井艸恵美、辻麻梨子


出典:amazon.co.jp

「医療保護入院」制度によって半ば強制的に精神科病院に入院させられた人たちの取材記録。

精神保健福祉法が定める「医療保護入院」では、家族など1人の同意と精神保健指定医1人の同意があれば強制入院をさせることができる。

本人の同意がなくとも入院させられることにより、DV夫などの家族と精神科医の独断的な見解によって、精神疾患がなくとも(あるいは強制入院させるほどではない軽微でも)、酷いケースでは数年あるいは数十年も入院させられる患者もいるようだ。

本人が拒否しようにも、警察OBで構成される民間移送業者が自宅にやってきて無理矢理連れて行かれ(拉致監禁)、精神科医の身勝手な診断により強制入院させられ、家族との連絡や面会もできず、手足を拘束させられ、薬漬けにさせられ、劣悪な環境の中で心も体も蝕まれる。

看護師による虐待のケースなどもあり、読んでいてまさにSF小説のようで、ウイグルの強制収容所を連想させる背筋がゾクッとなるものであった。

犯罪者でさえ弁護士立ち合いのもと裁判を受ける権利が与えられ基本的人権が尊重されているというのに、独裁的な精神科医が本人の同意なく好き勝手できるこのような制度は、ただちに改善されるべきであろう。

精神医学が好きな僕にとって精神科医は憧れの職業でもあったのだが、本書に出てくる医師免許を持っているだけの患者の人権に思いが至らない傲慢な医師は軽蔑の対象にしかならない(もちろん、素晴らしい精神科医もたくさんいるだろうが)。

行政の怠慢や金に目がくらんだ一部の精神科医の横暴を許さないためにも、弁護士・司法書士などの法律家や人権擁護団体の活躍による制度改革に期待したい。

『小説で読む行政事件訴訟法―基本からわかる行政訴訟の手引き』木山泰嗣


出典:amazon.co.jp

弁護士を目指し法科大学院に通う佐伯祐一だが、法律の学習にスランプを感じていたところ、先輩弁護士の紹介を通じて税務訴訟を得意とする法律事務所で3週間のエクスターンシップを経験することになる。

その法律事務所では、他の2人のエクスターンシップ仲間と切磋琢磨しながら、追徴課税処分を受けた企業の取消訴訟などに取り組むことになる。

著者は『小説で読む民事訴訟法』で著名な弁護士だが、主人公は同じく佐伯祐一で繋がりもあり、『小説で読む民事訴訟法』のファンはもちろん行政事件訴訟法の仕組みを分かりやすく学びたい方にもおすすめだ。

小説として読むと文章はところどころ稚拙に感じられるが、ストーカー被害にあっている恋人とのすれ違い、エクスターンシップ先での仲間との出会い、そして別れなど、恋愛やミステリーの要素を取り込んだストーリーは十分に楽しむことができる。

しかし、最後の展開では優美(主人公の彼女)は結構なクソ女ではないかと思った。

『マンガでやさしくわかる起業』中野裕哲


出典:amazon.co.jp

野菜農家で育ち都会に出て居酒屋で働く20代の女性が、ふとしたきっかけで出会った起業コンサルタントの助言を受けながら、起業して実家の野菜および漬物を使った料理を提供する居酒屋を開業するまでのマンガ。

マンガを通じて事業計画、融資、物件の賃貸、開業など一連の流れが分かりやすく理解できるが、この手の本の特徴として、マンガ以外の解説の文章にページ数をさいているのはもはやお決まりである。

マンガ自体なかなか読み応えがあって面白く、自分が起業したときと重ねてふと涙がこぼれるほどであった。

ちなみに著者は税理士や行政書士などの資格を持っている起業コンサルタントらしいが、起業はともかく会社設立手続き(登記)の専門家はあくまでも司法書士であることを強調しておきたい。

『BIOGRAPHY OF ABE SHINZO: The Life and Times of the Longest-Serving Prime Minister in Japanese History』LEADS PRESS


出典:amazon.co.jp

安倍晋三の政治家としての経歴を簡単にまとめたもの。

ところどころに固有名詞のスペルミスはあるし、内容は薄くてウィキペディアの方が情報量が豊富である。

暗殺の記述もあるから亡くなった後に急いで出版したものと思われるが、故人を利用するビジネスは好きじゃないなぁ。