アフターコロナで読んだ本まとめ③

女性

はじめに

昨日、NHKのBS1番組「ザ・ヒューマン」でアリス=紗良・オットの日本ツアー密着取材が放送されていた。

普段テレビはニュースや野球くらいしか見ないし、テレビをつけたとしもすぐに退屈して10分も集中していられないのだが、「ザ・ヒューマン」は50分間ガン見しちゃったよ。

5月にびわ湖ホールで行われたコンサートでもテレビカメラがいたけどこれだったんだな。

『Echoes Of Life』のポスター

【アリス=紗良・オット】2022年5月21日びわ湖ホールでのコンサートレポート

2022年5月25日

アリスさんのサイン入りポストカードが特典で付いてくるCDをアラフォーのおっさんが購入してはしゃいでいる様子を間近で撮影されていたからひょっとするとテレビに映っているのではないかと思っていたけれど、他の聴衆と同じで欠片も映ってなかったよ。

考えてみると肖像権の問題もあるし、意味もなく一般人を映すメリットなんてないもんな。

番組はコンサートに向けた準備、練習、移動や食事の様子など、アリスさんのプロ意識と素顔が垣間見える素晴らしいものでした(NHKオンデマンドでも配信されるらしい)。

しかし、ドイツでも日本でも外国人として扱われ差別的な発言も受けアイデンティティに苦しんだり、難病である多発性硬化症や脊椎の痛みに苦しんだりと、何でも持っているように見える人でも悩みはあるんだよなぁ。

アリスさんがピアノを弾いている姿を見る度に、まるで上質な自己啓発本を読んだときのように感動と共に生きるモチベーションが湧いてくると同時に、何者でもない自分に対する不甲斐なさややるせなさのようなものを感じずにはいられない。

別に有名になりたいとかテレビに出たいとかの名誉欲があるわけではなく(むしろテレビには出たくない)、才能を活かして聴衆に感動を与えている姿に感銘を受けるというか。

やっぱりピアニストって格好良いから、今からピアノ習おうかな。

50歳くらいまで10年間続けていたらそれなりに弾けるようになるかな。

『だから、あなたも生きぬいて』大平光代


出典:amazon.co.jp

中学生時代に受けたいじめが原因で割腹自殺を図り、その後非行に走って非行少年らとつるむようになった挙げ句、極道の妻となって背中に入れ墨をいれるまで落ちぶれた女性が、ある再会をきっかけに更生し、司法書士試験と司法試験に合格して弁護士になるまでの物語。

うーん、なかなか重い話だった。

いじめ(正確には侮辱、名誉毀損、器物損壊、暴行、脅迫などの犯罪行為)の章を読んでいると、最近旭川市であった女子中学生いじめ凍死事件を思い出したが、無力な中学生が学校という小さな箱の中で誰からも相手にされず、親も教師も助けてくれない絶望感はいかほどのものだろう。

残酷極まりないナチスやウイグルの強制収容所でさえ同じ境遇に置かれた仲間がいることを考えると、精神的にはもっと辛いものかも知れず、自殺を図ろうとするのももっともなことだと思う。

自己の保身のために他者を引きずり下ろすのは人間の醜い本性ではないかと思えてくるし、これが脳の十分に発達していない中学生であればなおさらであろう。

著者は中卒ながら司法書士試験も司法試験も短期合格(司法書士試験が2回、司法試験が1回)しており、過去の言動を詳細に覚えている(いじめを受けたことは忘れないだろうが)ことからしても相当優秀な頭脳の持ち主と思われ、旭川市の事件と同じく「まともな人間が知性を身に付けたばかりのサルに人生を台無しにされた」という表現が思い浮かんだ。

これは僕の個人的な見解だが、著者の脳みそ、集中力や極端な思考から察するに、アスペルガーなどの傾向があってついつい周囲から浮いてしまう存在だったのかも知れないな。

最初のいじめの場面などは読んでいて気分が悪くなると同時に怒りに震えたが、更生して司法書士になり暴力を振るい絶縁状態にあった両親から許してもらう場面、周囲の支えもあって司法試験に合格した場面などは、読んでいてつい涙が出てきた。

「人間はどん底からでもやり直すことができる」ということを教えてくれる素晴らしい本だった。

著者は現在大阪で弁護士として非行少年と向き合っているが、それにしても、この人と言い、橋下徹とか吉村知事とか、大阪弁護士会のメンバーは濃いなぁ(笑)。

『あなたの脳のはなし:神経学者が解き明かす意識の謎』デイヴィッド・イーグルマン


出典:amazon.co.jp

アメリカの神経科学者による脳の解説本。

アングロサクソンらしく実験やデータに基づいて脳の構造や可能性について記述されており、コンピュータと人間の脳との違いや「意識とは何なのか?」について考えさせられる良本。

脳科学が好きな人は是非。

『ウイグル大虐殺からの生還 再教育収容所 地獄の2年間』グルバハール・ハイティワジ、ロゼン・モルガ


出典:amazon.co.jp

ウイグル人女性の著者は、政治亡命した夫の後を追って2人の娘と共にフランスに移住するものの、書類手続きで帰国を促す電話によりウイグルに帰ったところ留置場に送られ強制収容所に入れられてしまう。

本書は2年を超える留置場、強制収容所および中国警察官の監視下における生活の様子を描いたものだが、フランスの家族にも知らされず入れられた強制収容所では、1日11時間も中国共産党のプロパガンダを暗記・暗唱させられ、終日眩しい蛍光灯の下で生活し時間の感覚や感情が失われていく。

著者は酷い拷問やレイプなどを実際に体験や目撃していないせいか(少なくとも本書では詳細な記述はなされていない)、中国共産党によるウイグル人弾圧について書かれた他書に比べると残酷な描写こそ少ないものの、いずれにせよ人権を無視した強制収容所の様子がよく分かる貴重な記録となっている。

最終的に、フランスの家族や在外ウイグル人の活動の成果もあってフランス政府も動き、著者は中国共産党により嘘の自白と陳述を強要された挙げ句フランスへの帰国が許されることになる。

ウイグル人は仮に外国にいても中国共産党から家族を人質に帰国するように強要され、周囲にはどこにスパイがいるか分からず、ウイグル人弾圧が続く限り完全な自由を手に入れることはできないだろう。

経済発展のためという名目の下に徐々に入植を進め気が付けば乗っ取られているというのが中国共産党の手口であり、日本でも沖縄や北海道の土地が次々と買われている現実を見ると、スパイ防止法の制定や外国人による土地売買の規制強化は早急に進めなければならないように思う。

『新人弁護士カエデ、行政法に挑む』大島義則


出典:amazon.co.jp

行政法の流れをストーリーで分かりやすく理解できる一冊。

17歳で司法試験に合格し19歳で史上最年少弁護士となった女性弁護士の楓は、1人で事務所を構えるパラハラ気質のやり手弁護士・鬼道のノキ弁(事務所スペースを間借りして営業活動を行う弁護士)として働くことになり、鬼道の助言を受けながら行政事件に取り組むことになる。

行政法とは、国や地方公共団体などの行政組織と私人(国民)との関係などを規定する各種法律のことである。

民事事件や刑事事件とは異なり一般人には馴染みにくいと思うが、行政事件とは例えば、医療ミスなどが原因で厚生労働大臣から医師免許取消処分(行政処分)を受けてしまった場合に、その取消処分の取消を求めて訴訟を提起するような場合を言う。

要は、役所の処分に納得がいかずに国民が役所を訴えるような場合である。

行政法は行政書士試験以来の勉強だが、法律初学者でよく理解できなかった当時とは異なり、今では憲法との関係も密接でとても面白い科目に思えてきた。

本書は行政法の基本知識は必要なものの、イマイチ理解しづらい行政法の手続きの流れや各種手続きが面白くかつ分かりやすく解説されているので、行政法を勉強されている方には是非おすすめしたい。