ランニング中にアスファルトの道路で転倒して大怪我をした話

ランニング中の転倒

6月の梅雨の晴れ間のある日、僕はいつものように夕暮れ時に近所をランニングしていた。

その日は人間関係で悩んでいることがあって、心がモヤモヤしていたので走るのを止めようかとも思ったのだが、こんなときこそ走った方がスッキリすると思い直し、いつものように家を出発した。

イライラしていたのか、スピードは心なしかいつもより速く感じる(しかしガーミンのランニングウォッチで計測したところ、いつも通りのペースだった)。

事件は家を出発してから1kmあたりの地点で起こった。

坂の上にある住宅街の狭いアスファルトの歩道を走っていて、駐車しようとしている車をサッと避けてそのままスピードを上げて走ろうとしたところ、道路の段差に躓いたのか勢いよくコケてしまった。

前のめりに転倒したのでとっさに両手を前に伸ばしたのだが、かなりの勢いがついていたらしくそれでは到底身体を支えきれず、そのまま身体の左側からほぼ一回転してしまった。

コケるのは約1年前に台湾の東海岸を旅行していた時以来である。

にゃにしてんの?願掛けです

雨の日に花蓮の街中を歩いていたところ大理石の道路で滑ってコケました

2019年5月17日

その時にも身体が回転するという見事なコケっぷりだったのだが、果たしてここまで見事にコケるのは、老化で足腰が弱っているのか、それともその逆で鍛えたお陰で運動神経が良くなっていて、コケた瞬間に身体を守ろうと素早く回転するのかどちらだろうかと考えているとなんだか笑けてきた。

それはともかく、両方の手のひらに加え、左ひじ、右ひざ、そして左側の腰の下あたりと、満遍なく身体をすりむいてしまった。

中でも左ひじへのダメージは凄まじく、ピンク色の具が見えている大きな円状の傷の周りに無数の切り傷ができていて、さながら切り裂きジャックに襲われたみたいになっている。

回し車から吹っ飛んでも傷一つないハムスター。君は良いなぁ

回し車から吹っ飛んでも傷一つないハムスター。君は良いなぁ

はて、ここまで派手にコケた原因は何だったのだろうかと振り返ってみると、僕は考え事をしながら走っていて、普段から走り慣れている道路ということもあってか足元に注意を払っていなかったのだ。

前回ランニング中にコケた時も、音楽を聴きながら走っていてさらに考え事をしていたのが原因だったのだが、その時は幸いにも山の中で地面は土だったので大怪我には至らなかった。

ちなみに以前はランニング中に音楽を聴いていたのだが、僕の場合はついついテンションが上がってオーバーペースになってしまうし、足元にも集中できず周りの音も聞こえなくて事故の原因になると思ったので止めたのだ。

それはともかく、今回僕は一体何について考えていたんだろう。

そうだ。人間関係について悩んでいた僕は、「コロナや東日本大震災などの緊急事態は人間の本性をあぶり出してしまうのか」というテーマについて考えていたのだった。

走りながら考えるテーマにしてはどうも重すぎるような気がする。

ランニング中に自然と頭に思考が浮かんでくる分には良いのだが、頭が何かでいっぱいになって何も手が付かないというような状態の時に走り出すのは危険過ぎる(まさに、「足が付かない」という表現がシックリ来る)。

転倒した後にあたりを見回すと、近くにいたおばさんや、それほど凄い音がしたのかわざわざ家から出てきたと思われるおばさんが遠巻きに僕を見ていた。

血まみれになって地面に這いつくばり悶えているこの哀れなおっさんに何か声でも掛けてくれるのかと思ったのだが、ソーシャル・ディスタンスを意識しているのか、なんだか怖い物を見るような視線を感じたので、僕は痛みをこらえながらもそそくさとその場を離れることにした。

コロナは人を思いやる心さえも奪ってしまうのだろうか。

転倒したショックからなんだか放心状態になり、僕は多くの散歩をする人たちが行き交う川沿いの道をトボトボと歩いて帰った。

帽子にサングラス、そしてバフを着用した僕は一見すると変質者のような出で立ちで、さらに全身血まみれの姿は周りから畏怖の目で見られているような気がして、切り裂きジャックに襲われたというよりも自分がジェイソンになったように思えてきた。

いや、皮膚がえぐられて他人に避けられながらヨボヨボと歩いている姿はまるで海外ドラマ『ウォーキング・デッド』のウォーカー(ゾンビ)のようである。

それはともかく、久しぶりの大怪我をした僕はなんだか吹っ切れたような気がして、悩んでいたのも馬鹿らしくなってどうでも良くなってきた。

それは「人生に絶望した。もう死んでも良い」というような破滅的な思考ではなく、「悩んでいる人間関係などさっさと清算して前に進もう」という建設的な思考である。

例えるならば、会社での人間関係に酷く悩んでいてそれが片時も頭から離れず、そのことが原因で危うく命を落としかけるような事故に遭った時に、「こんな目に遭うくらいならもう会社なんて辞めてやるぜ畜生!」と決心するようなものだ。

ランニングで出るスピードなんて限られているし、ランニング中に転倒したとしても余程打ち所やコケた場所が悪くない限り回復不能になるくらいの傷を負うことはないと思うが、それでもアスファルトの衝撃は相当なもので、これが自転車やバイクだったらと思うとゾッとする。

幸い病院にも行くことはなく、身体はまだ痛むもののバンドエイドのお陰か流血も数日たって治まった(最近のバンドエイドは高性能だ)。


出典:Amazon.co.jp

この事故があって以来、僕は二度と同じ過ちを繰り返さないためにも、「心が整わないときはランニングをしないこと」、「ランニング中は走ることに集中すること」を心に誓った。

そして、近くでコケている人を見かけたらたとえコロナ禍でも手を差し伸べることにしよう。

皆さんもランニング中の事故にはくれぐれもご注意を!