11月になると毎年宮古島に滞在するのだが、この時期は気温こそ大阪の夏の終わりといった感じで過ごしやすいものの、北風は強くて天気が悪い日も多い。
平日は夜に飲み歩くくらいなので問題はないのだが、土日に海でも見に行こうと思っていたのに雨が降るとやることがなくて憂鬱になる。
今回(2019年)の滞在中も天気が悪い日が多かったのだが、11月最終の土曜日、見事な青空が広がっていたので自転車で与那覇前浜(よなはまえはま)ビーチに行くことにした。
平良市街地の中心部から与那覇前浜ビーチまでの距離は10km程度で、ランニングで往復するには結構ガチなトレーニングになるが、晴れた日にサイクリングを楽しむには丁度良い距離だ。
ドン・キホーテにて約15,000円で購入した自転車(1ヶ月間ならレンタルよりも購入の方が安い)にまたがり、平良市街地のマンションを出発する。
宮古島は山がない真っ平らな地形のせいか風がもろに身体に当たり、晴れていても時折強風に身体が煽られる。
島は年々都会になっていくようで、お店も車も多い市街地を抜けて、国道390号線を南にしばらく走ると与那覇湾が一望できる場所にたどり着いた。
湾だけあって、宮古島にしては海の色もそれほど綺麗とは言えないのだが、人がおらずのんびりと過ごすには最高だ。
自転車や徒歩で離島を巡っていると、バイク(または車)では気付かずに通り過ぎてしまうような景色に出会えるのが嬉しい。
なんだか宮古島の青空と素朴な風景に妙にマッチする宇多田ヒカルのベストアルバムをiPhoneで聞きながら、どこかノスタルジックな感傷にしばし浸る。
一休みした後、再び与那覇前浜ビーチを目指して、宮古島らしいサトウキビ畑が広がる道をさらに南へと走る。
道は真っ直ぐで概して走りやすいのだが、さすがに離島らしく、時折ボウボウに生えている草や歩道のど真ん中にざっくばらんに停められた車に進路を塞がれながらも、颯爽と自転車を走らせ与那覇前浜ビーチにたどり着いた。
最近の中国人観光客爆増の影響でビーチの景観もやや汚されているのではないかと不安になったが、青空の下の与那覇前浜ビーチは相変わらずの美しさで、他の場所ではお目にかかれそうもない真っ白な砂浜と、頭上の雲が動く度にその表情を変える青とエメラルドグリーンが混在した海の色彩が印象的だ。
「次に来るのはまた来年になるかな」と、やや名残惜しい気持ちを抱きながら与那覇前浜ビーチを後にし、宮古島と来間(くりま)島を結ぶ来間大橋を渡る。
来間大橋は片側に歩道らしきものがあり、自転車や徒歩でも渡ることが可能だ。
伊良部大橋に比べると高さも長さもなく、風こそ強いものの、宮古ブルーの海を眺めながら自転車で走り抜けるのは最高に気持ちが良い。
来間島に入り、観光客向けと思われる飲食店が立ち並ぶ通りと小さな集落を抜けて竜宮城展望台にやって来た。
美しいサンゴ礁の海を挟んで対岸に宮古島を望む竜宮城展望台からの眺めは、宮古島でも一二を争うほど素晴らしい。
竜宮城展望台からの眺めを堪能した後は、隣接するカフェ「楽園の果実」で休憩がてらランチを取るのがほぼ毎年のお決まりコースになっている。
カフェで腹ごしらえをした後、再び来間大橋を渡って来た道を戻ることにした。
宮古島は沖縄の離島にしては結構大きなサイズなので、本格的にサイクリングを楽しむ人を除いて自転車に乗っている観光客は少ないと思ったのだが、意外にも道中では何名かとすれ違った。
国道390号線を平良市街地に向け北に走っていると、前方にロードレーサーを見つけて僕の負けず嫌いの心に火が付いた。
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
座ったままの姿勢で全力でペダルを漕ぎ、凄まじいスピードで瞬く間にロードレーサーを抜き去る。
ドンキのママチャリでロードバイクに勝つのは最高に気分が良い。
死ぬ気でペダルを漕いでいるにもかかわらず、あくまでも買い物に出かけるような普段着のおばちゃんを装いながら、そしらぬ顔でサラッと追い抜いていくのがポイントだ。あぁ、ランニングで足腰鍛えといて良かった。
宮古島の市街地まで戻り、市街地近くのパイナガマビーチにやって来た。
ビーチ前のファミマでオリオンビールを買い、ビーチの階段に腰掛け、のんびりと海を眺めながらビールを喉に流し込む。
バックグラウンドミュージックには宇多田ヒカルの「Flavor Of Life」が流れ、走り抜けた後の達成感に浸りながらもどこかに人生の虚しさを覚える。なんてBeautiful World。
クルーズ船が入港しているときは中国人観光客で埋められていたり、たまにゲイが出没したりするパイナガマビーチだが、それでも市民の憩いの場は健在で、夕暮れ時が迫るビーチではみんなが思い思いに時を過ごしている。
ビールを飲み干し、南国の太陽で火照った身体を冷やすべくマンションへと戻った。
青空が広がる真夏の陽気の下、宮古ブルーの海とサトウキビ畑を眺めながら自転車で走るのは忘れられない経験となった。
時間がある方にはおすすめなので、皆さんも是非自転車で宮古島を疾走して欲しい。