モロッコはインド・エジプトと並んで「世界三大ウザい国」の一つとして知られている。
僕はエジプトは訪れたことがないし、インドも人が親切で穏やかな南インドのケララ州しか訪れたことがないので比較はできないのだが、今回始めてモロッコを訪れてモロッコが「世界三大ウザい国」と呼ばれる理由が分かったような気がした。
モロッコの都市では、観光客が集まるメディナ(旧市街)やターミナルにお金目当ての子どもや青年がたむろしていてとにかくウザかった。
メディナを歩いていると突然「チャイナ、ジャパン」などと声を掛けられたり、子どもや青年が勝手に道案内を始めようとしたりしてきて、下手に相手にするとつきまとわれる羽目になる。
僕がアラブ系やイスラム教の人たちに免疫がないこともあって、なんだか怖いので無視して一目散に逃げるのだが、順調に目的地に進んでいたにもかかわらず、必殺道案内人たちから逃げているせいで逆に迷路のようなメディナで迷子になってしまう。
そもそも、何故道案内ごときでお金が貰えると思っているのだろうか。
自主的に手渡すチップや小銭ならともかく、僕は嫌なことをされた相手には意地でもチップを支払いたくない。
メディナではいつ何時声を掛けられるか分からず、おちおちとGoogleマップを見たり写真を撮ったりするために立ち止まる余裕もなかった(勝手に写真を撮ったらチップ要求されそうだし)。
今回モロッコで訪れた都市(タンジェ、シャウエン、フェズ)の中でも、ヨーロッパへの不法移民が集まるらしい港町タンジェのメディナは特に雰囲気が悪かった。
一度タンジェのメディナを歩いていたとき、メディナを根城にしている松葉杖をついた青年と目が合って、ひたすら追いかけられる羽目になった。
迷路のような路地裏で観光客を見つけ次第追ってくるその様子は、さながら「ザ・ウォーキング・デッド」のウォーカー(ゾンビ)のようである。
恐怖を感じたのでメディナの坂道を早歩きで上って逃げるのだが、そのアラブ顔の青年は松葉杖をつきながら、早歩きの僕と同じくらいのスピードで追ってくる。なんか面白いんですけど。
一方「青い街」として有名なシャウエンはタンジェよりも概して平和な雰囲気だったが、バスターミナルでは青年につけ回され、ひたすら無視して歩いていると「ファック」と捨て台詞を吐いて去って行ったので到着早々嫌な気分にさせられた。
また、迷宮都市として有名なフェズ滞在中にもこんなことがあった。
タクシーでフェズ駅前に到着して料金を支払って降りようとすると、どこからか老人が現れてタクシーのドアに手を掛けていた。
てっきりタクシーを待っていて乗り込むのかと思ったのだが、僕に向かってチップをくれというような仕草をしている。
無視して立ち去ろうとすると、今度は目の前に青年が現れて僕の行く手を塞いでいた。
タクシーを降りたばかりで手に小銭を握っていたのでそれが目当てだったのだろう。
気にせず歩いて行くと腕を掴まれたので強引に立ち去ろうとすると、そのモロッコ人は去り際に唾を吐きかけていった。
それまでのウザいモロッコ人にフラストレーションが溜まっていたこともあるが、さすがに僕も頭にきたので、思いっきり唾を吐き返してやった。
僕の唾は、彼のそれに比べて量も飛距離も2倍くらいあった。ざまーみろだ。
さすがに襲いかかってくるかな、と思って身構えていたのだが、そのモロッコ人は唖然とした表情で僕を見ながら立ち尽くしている。
一体何なのですか。唖然としたいのは突然唾を吐きかけられた私なのですが。
観光客なら必ず通るであろうターミナルやメディナに行くたびにそんな調子なので、モロッコで外出するのもだんだんと億劫になってしまった。
イスラム建築やメディナにはあまり魅力を感じなかったこともあって、モロッコ滞在の後半は半ばホテルに引きこもりになって過ごした。
それに、僕はドMでもなければ何か大義を背負ってモロッコを訪れているわけでもないので、わざわざ嫌な思いをしてまで観光をしたくはない。
例え、年収1億円くれたとしても僕はモロッコに住みたいとは思わない(狙われそうだし)。年収300万でも日本で暮らすことを選ぶだろう。
モロッコの数少ない魅力の1つとも言える物価の安さも、いくらお金があっても住みたいと思わない僕にとっては何らの意味もなさない。
もし仮に、アラブ系の超美人で性格も抜群なモロッコ人女性から「私と結婚してモロッコに住んで欲しい」なんて言われても瞬時に「No」と言う自信がある。石田ゆり子なら10時間くらいは悩むかもしれない。
今回はシャウエンを訪れるのが目的だったのでモロッコの北部を巡り、モロッコが気に入ったら次回はサハラ砂漠を含めた南部を巡ろうと思っていたのだが、もはやそんな気は失せてしまった。
お気に入りの女性から「どうしてもモロッコに行きたいんだけれど、1人だと怖いから付いてきてくれない?」なんて言われたら行くかもしれないが、そんな機会でもなければ僕が再びモロッコを訪れる可能性は限りなく低いだろう。
モロッコ人でさえ、スペインに密入国するために命をかけてジブラルタル海峡を渡ってまで逃げたいと思うような国なのだ。
一方、豊かな国の観光客はその逆でスペインからフェリーでモロッコに入国するわけだが、たった1時間程度の船旅にもかかわらず、スペインとモロッコの格差には驚くばかりである。
仮に日本から北朝鮮に船で渡ったとすれば似たような印象を抱くのかもしれないと思ってしまった。
もちろん、モロッコ人も全員が全員悪い人ではないと思う(むしろ、悪い人はごく一部なのかもしれない)。
しかし、観光客が行く場所には必ずと言って良いほどお金目当てのウザいモロッコ人がついて回るので、何か特別な理由でもなければ、僕はモロッコを旅行先としてオススメしない。
シャウエンの青い街はそれなりに魅力的だったので人生に一度は訪れても良いと思うが、シャウエンだけが目的であれば、モロッコでは高級ホテルにでも泊まってドア・ツー・ドアでサクッと移動するのが良いと思う(それでも、ストレスを感じることは避けられないだろう)。
なんだか長くなってしまったが、モロッコよ、僕を無事に日本に帰してくれてシュクラン(ありがとう)!
僕はあなたのことが嫌いなのでもう二度とお会いすることはないかもしれないけれど、遠い異国の地から今後の更なるご活躍をお祈り申し上げます。