モロッコ北部の都市フェズに滞在中、「世界一の迷宮都市」として知られるフェズのメディナ(旧市街)を観光してきた。
フェズのメディナはアラビア語で「古いフェズ」を意味する「フェズ・エル・バリ(Fès el Bali)」の名で呼ばれ、世界遺産にも登録されている。
メディナは城壁で囲まれておりメディナ内の路地はさながら迷路のようになっているが、これは外敵の侵入を防ぐのが目的らしい。
フェズのメディナの入り口には青色が鮮やかな門バブ・ブージュルード(通称:ブルーゲート)がそびえ立っている。
バブ・ブージュルードからカラウィーン・モスクまではメインストリート(Rue Talaa Kebira)が真っ直ぐに伸びている。
ちなみにバブ・ブージュルードをくぐって通りを少し歩いたところには、観光客に人気のカフェと中華レストランがあるのでメディナ散策中の休憩や食事に利用して欲しい。
迷宮都市とは言っても、フェズのメディナはメインストリートを起点に歩いていればそれほど迷うことはなさそうだ。
バブ・ブージュルードから少し歩くとマドラサ・ブー・イナニア(Madrasa Bou Inania)がある。
地図も持たずに狭い路地裏に入るとそりゃ迷うだろうが、人気のない路地裏でウザいモロッコ人に絡まれるのも嫌だったので、観光客で賑わうメインストリートを中心に観光スポットを巡ることにした。
シャウエンの青い街はともかく、僕はモロッコのメディナには惹かれないのか、お土産屋さんが立ち並ぶフェズのメディナを歩いていてもそれほど魅力的だとも思わない。
正直言って、これなら武蔵小山の商店街を歩いていた方が楽しい。
フェズのメディナは客引きがウザいとの評判だったので覚悟していたのだが、たまに声は掛けられるものの思ったほど大したことはなく、東南アジアと大差ないレベルで安心した。
モロッコのメディナではお馴染みのチップ目当てで勝手に道案内をしようとする少年や若者もいるが、フェズのメディナは観光客が多いこともあってか、つけ回されることもなくそれほどウザさを感じなかった。
メインストリートの突き当たりにあるのが、9世紀に建てられたモスクがもとになっているカラウィーン・モスク(Qarawiyyin Mosque)だ。
カラウィーン・モスクの近くには神学校のマドラサ・アッタリーン(Madrasa Attarine)があり、こちらは内部を見学することが可能だ。
カラウィーン・モスクを通り過ぎるとスファリーン広場がある。
スファリーン広場を抜けてシックな狭い路地を歩いて行くとタンネリーと呼ばれる革なめし地区があり、タンネリーに近づくと徐々に動物の皮の生臭い匂いが漂ってくる。
タンネリーはフェズのメディナの中でも有名な観光名所で、革なめしの作業場沿いには作業現場を上から見学できるテラス席が設けられたお土産屋さんが立ち並ぶ。
タンネリーを歩いているとお店の前にいる客引きやガイドが声を掛けてくるので、その内の1つを選んで呼び込みに付いていくことにした。
お店に入り、生臭い匂いを軽減するためのミントをもらってテラスへと上がる。
作業場では、幾何学模様のように並んだ穴に入った溶液にどっぷりと浸った職人たちが作業をしている。
上から見ているだけでも、3Kでかなりの重労働だということが分かる。
獣と染料の入り交じった強烈な匂いはするものの耐えられないというほどではなく、ミントを口にくわえながらパシャパシャと写真を撮った。
見学後はお土産を購入するかチップを支払う必要があるみたいで、せっかくなのでモロッコ土産に伝統的な履物である先が尖った黄色いバブーシュを購入することにした。
言い値は確か250ディルハムか300ディルハムだったが200ディルハムにまけてもらい(相場は不明)、チップをくれとも言われたが、お土産を購入したしキックバックでももらっているんだろうと思ってやんわりと断った。
正直、モロッコのものを日本に持って帰るとPTSDに苛まれそうだったので気が引けたのだが、履きやすいバブーシュは今では自宅でAmazonからの配達が届いた時に活躍している。
タンネリーを見学した後は、再度メディナを散策しながらバブ・ブージュルードへと戻ることにした。
イスラム建築にそれほど興味がないこともあってか、フェズのメディナは正直に言うと期待外れで(迷路のような路地で迷子になるのが楽しいのかな?)、1日も観光すれば十分だと思った。
僕にとってフェズはタンジェやシャウエンに比べると退屈な街だったけれど、人によって好みは分かれると思うので、是非「世界一の迷宮都市」と呼ばれるフェズのメディナを実際に歩いてみてその魅力を発見して欲しい。