【レビュー】『沖縄の島へ全部行ってみたサー』カベルナリア吉田

読書

いずれは沖縄の有人離島を制覇したいと思っている僕にとって、本書のタイトルは魅力的過ぎたので思わず購入してしまった。ジャケ買いならぬタイトル買いというやつである。

著者のカベルナリア吉田さんは離島マニアのようで、日本の離島に関する本をよく書いている紀行ライターだ。

僕自身、旅行に関するブログ記事を書いていることもあって最近は出版されている旅行記を読むことも多いのだが、著名人の旅行記と言えば、一人旅を唄いながらもカメラマンなどのスタッフが同行していたり、それなりのホテルに泊まって美味しい物を食べる贅沢な旅だったりして、ただ単に読み物としては面白くてもなかなか僕のような一般庶民には共感できないところもある。

しかし、本書は正真正銘の一人旅で、カメラと大きな荷物を抱えて安宿(民宿)に泊まりながら離島をバスやフェリー、徒歩や自転車で回る姿はまるで学生のバックパッカーのようだ。著者は旅行時点で38歳と、年齢も近くてついつい親近感が湧いてしまう(おまけに独身だし)。

さて、タイトルにある通り、本書は沖縄の全ての有人離島を巡った旅行記である。

宮古諸島の水納島や八重山諸島の新城島、大東諸島の北大東島など、観光客がなかなか訪れない難易度の高い離島についても書かれているのが興味深い。実際、これらの離島は国内にあるにもかかわらず、下手に海外に行くよりも訪れるには手間も費用もかかるのだ。

それぞれの島での滞在は1泊2日程度(宿があるところには泊まるようにしているらしい)と短いものが多いが、著者独特のユーモアを交えた文体で、写真を交えながら各離島の魅力が伝えられている。

僕自身、数多くの離島を訪れているということもあるのだろうが、読み進めていると、それぞれの離島の風景が頭に浮かんできて、まるで実際に沖縄の離島を歩いているかのような気分になってくる。

シャイながらも話しかけると親切な離島の人たち、畑や牛だらけののどかな離島の風景、ため息が出るほどの美ら海、他の旅人との出会いや民宿で泡盛を飲み交わす離島の夜・・・本書では、忙しい観光ではなかなか味わうことができないような素朴な沖縄の離島の魅力を満喫できる。

ただ、前述の通りそれぞれの離島には1泊2日の滞在が多く、各離島の情報が少なくて、著者も指摘する通りその離島の魅力を存分に味わうことができないのが難点だ(もっとも、各離島について詳しく書いていたらとてもじゃないが一冊には収まりきらないだろうけど)。

また、本書は2004年に出版されたものなので離島への行き方などの情報も古くなっているだろう(沖縄の離島も、どんどん近代化されていくのがなんだか寂しい)。ガイドブックではなく、旅行記として読んで楽しんで欲しい。

本書を読んで、また沖縄の離島に訪れたくなった。今年の10~11月に2ヶ月くらいかけて沖縄の離島巡りをしようかと思っているのだが、なんだか待ちきれない。

アチコーコー(熱々)のポークたまごおにぎりと冷えたオリオンビール片手に、誰もいない離島のビーチで、時を忘れてのんびりと綺麗な海や夕日を眺めていたいものである。

沖縄の離島好きにはおすすめの一冊です!