『After You』Jojo Moyes:レビュー

映画「世界一キライなあなたに」の原作(洋書)である『Me Before You』の続編である。

参照:『Me Before You』Jojo Moyes:レビュー

『After You』のあらすじだが、主人公のルイーザ・クラーク(ルー)は、ウィリアム・トレイナー(ウィル)との別れの後、ウィルの残したお金でロンドンのアパートに住み、特に人生の目的もなく空港のバーで働く。ウィルとの別れの喪失感から抜け出せないルーは、ある日住んでいるアパートのビルから足を踏み外して落ちてしまう。

一命を取り留めたルーは療養のため生まれ故郷のイギリスの田舎町、Stratfordに帰るのだが、ウィルとの思い出が詰まった、噂がすぐに広まる小さな街では暮らしにくく感じ、ある程度怪我から回復するとロンドンに戻ることを決意する。

ロンドンでの生活を再開したルーだったが、ある日突然、住んでいるアパートにウィルの娘と名乗る人物が現れる・・・

本作でもルーは相変わらず可哀想な女で、いきなりビルから落ちて大怪我をしたり、ウィルの娘(リリィ)の面倒を見ることになったり、働いているバーの新しいマネージャーがとても嫌な奴だったりする。

16歳のリリィは問題児で家からも追い出されるような子なのだが、リリィにウィルの面影を見るルーは、迷惑を掛けられても彼女を放っておくことが出来ず、一緒にアパートに暮らすことになるのだが、実はリリィには秘密があった・・・

タイトルに『After You』とあるとおり、本作でも度々ウィルの面影が現れるのだが、前作ですっかりウィルファンになってしまった僕は、その度に小説の登場人物と同様にウィルに対する喪失感で満たされるのだ。ルーは困難に立ち向かうと心の中でウィルに話しかけるのだが、僕も前作でのウィルを思い出してつい涙腺が緩んでしまう。

しかし、ウィルは本人が言っていたとおり昔は相当に嫌な奴だったようで、子供も大学時代に捨てた女との間に出来た子だったのだ。映画「世界一キライなあなたに」のウィルが好きな方は、本作を読むとウィルのイメージが崩れてしまうかもしれない。

映画を見てから読んだ前作とは違い、本作は前提知識なく読んだのだが、英語にもさほど苦労することなく、楽しんで読み終えることが出来た。前作は「死」、本作は「生」をテーマにしているように思う。

前作以上にハチャメチャなルーの人生だが、果たしてルーはウィルに対する喪失感を克服し、人生に目的を見いだし幸せへと向かっていくことが出来るのだろうか。