『人生を変える読書 無期懲役囚の心を揺さぶった42冊』美達大和:レビュー

『人生を変える読書 無期懲役囚の心を揺さぶった42冊』の著者の美達大和さんは2件の罪で服役中の無期懲役囚で、獄中で数多くの本を執筆し、代表作としては『女子高生サヤカが学んだ「1万人に1人」の勉強法』などがある。

「時間は有限であり、命と同じです。」と時間の重要性を述べる著者は、徹底的に無駄を省いて合理性を追求し、ビジネスで成功して20代半ばで年収10桁、身体を極限まで鍛え上げ、頭脳明晰で読書数は月数百冊という超人だ。そして、曲がったことが嫌いな著者は自分の信念を貫くあまり罪を犯して服役してしまう。

まるで架空の人物のようなプロフィールであるが、この人が書く文章はとても洗練されていて、心に響く表現も多い。そして、この人の本を読むたびに「こんなすごい人がいるんだ・・・」と自分の平凡さを改めて認識させられ、また大きなモチベーションが湧き上がってくる。

決して犯罪を肯定する訳ではないが、僕はこの著者の頭の良さ、ストイックさには畏敬の念を抱いており、一生社会に戻ることがないこの人が獄中でどんな本を読んでいるか、そしてどんなことを考えて生活しているかを知りたくて本書を購入した。

僕も「読書家」と言われることも多いが、年間にするとせいぜい100~200冊程度、この著者の1ヶ月分だ。自分が影響を受けた人物のおすすめする本、そして読書だけでなく生き方に対する姿勢を知ることは非常に有益だと思う。

さて、この『人生を変える読書』では著者おすすめの42冊が著者の人生を交えて分かりやすく(頭の良い著者らしく難解な表現も出てくるが)簡潔に紹介されており、つい読みたくなってしまうものばかりだ。

『「社会性」を身につけるために』、『「心の支柱」を見つけるために』、『「愛」を感じるために』など、目的ごとに全7章に分けて様々なジャンルの本が紹介されており、著者の言うとおり、論理ではなく感情に訴える本が選ばれている。戦争に関連して書かれた本も何冊かあり、戦争に携わった人間の心が、自身の誤りに気付いて仮釈放を放棄し二度と社会に出ないと決めているこの著者に与えた影響の大きさもうかがわせる。

また、各章の間には本の読み方など、読書に関するコラムも書かれている。

それにしても、刑務所から一歩も出ることが出来ない著者が読書を通して充実した時間を過ごし、そして執筆や読者との交流を通して社会に貢献しているのを見ると、時間も自由もあってはるかに恵まれた環境にいるはずの自分の無力さを感じさせられる。

最近の新刊は似たようなタイトルが多くて辟易しており、また古い本は何を読んだら良いか分からなくてここしばらくは読書から遠ざかっていたが、本書を読んでまた読書熱が高まってきた。

紹介されている42冊に関しては本書を読んで確認して欲しい。前々から気になっていた本も何冊か紹介されていたので、早速購入して読んでみることにした。時間は有限だ。迷っている暇なんかない。